活動報告

100年経営アカデミー後期 4日目 開催報告

2017年12月19日

11月25日(土)六本木のハリウッド大学院大学にて、100年経営アカデミー後期の4日目を行いました。



今回のテーマは「ファミリービジネスの経営戦略」です。
後藤代表理事の講義やFSX株式会社の事例研究を通して学びを深めました。

1限目は、「ファミリービジネスの経営戦略」について、一般企業との相違点を挙げながら“ファミリービジネス長寿経営の6つの定石”を元に、ファミリービジネスにおける経営戦略の特徴を探りました。


老舗企業は“駅伝経営”とも言われ、ファミリービジネスの永続・発展は、「創業者精神」「ファミリー影響力」の維持と次世代への継続により実現されます。
しかし、実際にはファミリービジネスとして創業しても、長く続けば続くほどノンファミリー化し、株式保有比率も下がっていくという傾向にあります。永く続くファミリービジネスでは、その長所と短所を踏まえた上で経営戦略を立てており、その特徴は大きく2つに分けることができます。

第一に「長期的経営」です。1910年創業のシャボン玉石けん社は、2代目へ承継した際、“添加物を減らした本当に良い商品を届けたい”という2代目自身の思いを実現するべく、95%売上減という厳しい状況に立たされながらも、17年間商品開発を続け、最終的に経営を黒字化させ、現在に至ります。
このような戦略を実現できること事態がファミリービジネスの特徴であり、経営者が「長期的な視点での経営」を選択したからに他なりません。

第二に「身の丈経営」です。「身の丈経営」とは、その名の通り、自社の資金や技術に無理のない範囲で経営を行い、社員の能力や資源の成長と合わせて事業を拡大していく経営の有様を示しています。
海外では身の丈経営を表す表現が存在せず、そのことからも「身の丈経営」という概念は日本特有の考え方であることが分かります。
1700年に創業した福田金属箔粉工業社は、元々金銀箔粉の商いを生業に創業しましたが、その後技術の応用と開発を進め、環境の変化に合わせて仏壇や仏具、蒔絵に事業を広げ、現代では携帯電話電磁波シールド塗料用の箔粉を生成するメーカーとして経営しています。福田金属箔粉工業社はまさに「身の丈経営」を実践し続けた結果、事業成長を遂げてきた事例と言えるでしょう。



お昼休憩をはさみ、2限目には特別講師として、FSX株式会社取締役会長の藤波璋光さんと、同社代表取締役社長の藤波克之さんにご登壇いただきました。


会長の璋光さんにはFSX社の前進である藤波タオル社創業当時のお話を伺い、現社長の克之さんにはFSX社が行ってきた、数々の戦略についてお話を伺いました。

現在50周年を迎えるFSX社は、父親が創業し息子が承継するという典型的なファミリービジネスです。
母親も社の相談役として主に経理業務を取り仕切っています。
しかし、当初璋光さんは息子である克之さんに会社を継がせる気はなく、克之さんの方も全く継ぐ気がなかった、と言います。完全にゼロの状態から事業承継に至った珍しいケースと言えるでしょう。
実際、承継に至ったきっかけは、璋光さんが急に倒れられたことです。その際、会社へ入ろうと克之さんは決心します。


そしてもう一つが、入社後に克之さんが手がけた様々な事業が成長していったことです。
克之さんはFSX社へ入社後、「おしぼり屋」の旧態依然とした悪い労働環境を改善すべく、ITを活用した新しい集金システムの構築やガテン業からおもてなし業への転換をはかるための積極的な情報発信、その他にも新しい市場、新商品の開発と様々な改革を行いました。
特に克之さんは「おしぼり」は日本のおもてなし・マナー・衛生管理の文化であり、世界に誇るべきものである、という確信をもっており、「最高のおしぼり体験を全世界に提供する」というコンセプトの元、グローバル市場への展開も進めていきました。

克之さんは、様々なプロフェッショナルの知恵や技術を借りながら、ここまで事業を発展させてきましたが、「これだけ事業を動かしておいて、自分が社長をやらないなんて無責任すぎるのではないか」という想いを抱くようになり、自ら「社長をやります」と璋光さんへ告げ、2014年に代表取締役社長へと就任しました。
社長の息子が入社しても社員全員が温かく迎え入れてくれ、克之さんの先進的な意見にも耳を傾ける風土のあるFSX社だからこそ、成し得た事業承継劇といえるでしょう。


3限目は、2限目のお二人のお話を受けて、創業期、革新期、承継後に分けて受講生からの質問タイムを設けました。
お二人からいかに本質的なお話を引き出すか、受講生も様々な視点から問いかけました。


講義終了後は、講師を交えた懇親会を催し、更なる意見交換を行いました。

次回5回目は、12月16日(土)に行います。後期講座の最終日となるため、受講生による最終発表と後期講座のまとめ、修了式を行います。