活動報告

第8回視察ツアー「金沢視察ツアー2019」

2019年10月30日

2019年10月10日(木)・11日(金)、当機構主催の第8回視察ツアーを開催いたしました。1年に2度行っている本ツアーは、100年超企業に訪れ現当主にお話を伺う中で、“長寿経営の秘訣”を学ぶことを目的としています。金沢への視察は今回で4回目となりますが、昨年1300周年を迎えた法師旅館の他、地域に根付いて長年ビジネスを行う、醤油から麹まで幅広く手がける“ヤマト醤油味噌”金沢の文化の発展を支えた“うつのみや”、地元企業の発展・存続に携わる“北國銀行”にお伺いし、永続経営の秘訣について学びました。


一行は10月10日(木)午後に加賀温泉駅へ集合。宿泊先である創業1301年の法師旅館のスタッフにお迎えいただき、バスで粟津温泉郷を目指しました。
法師旅館へ到着後は、法師旅館の会議室にてオリエンテーションと講義を行いました。まず事務局から本ツアーの目的について説明を行い、次に参加者の皆様から自己紹介をいただきました。

その後、後藤代表理事による講義を行いました。法師旅館の他、今回の視察先企業についての見どころの解説に加え、長寿企業大国にっぽんの概要と法師旅館の事業承継について海外も非常に注目をしている点について触れながら講義を行いました。法師旅館では、現在46代目がご当主を務めていらっしゃいますが、後藤代表理事は47代目に就任予定であった息子様が不慮の事故で亡くなってしまった事実を伝えた上で、後継者が今後どうなるのか各界が注目していると話しました。


今回のツアーでは、新たな試みとして法師旅館の歴史に文学の観点からもアプローチしその魅力に迫るべく、参加者としてお越しいただいた船橋屋の佐藤恭子さんに「文学の観点から見る法師様の歴史」と題して講義いただきました。
佐藤さんは、自社の214年の歴史をこれまでに船橋屋のくず餅を愛した文豪に着目し、吉川英治や芥川龍之介が実際に訪れていたエビデンスを作品の中から探し出し、企業PRの一環で情報発信を続けてこられました。その結果、新卒のエントリー数が10年間で250人から約17,000人に飛躍的に伸び、自社の持つ歴史が企業価値の発信や企業広報に繋がる証明をしたとして、その手法に注目が集まりつつあります。佐藤さんのリサーチの結果、法師旅館にも志賀直哉や武者小路実篤など名だたる文豪が相次いで宿泊していたエビデンスが発見され、その他にも白樺派の文豪たちが多数宿泊していた可能性を示唆しながらお話されました。
また、近年では文豪を題材にしたアニメ「文豪ストレイドッグス」やゲーム「文豪とアルケミスト」が若者の間で流行っており、文豪の記念館や自治体、企業などがコラボしPRを行う事例についても説明いただきました。


その後に、46代目の法師善五郎さんに講義いただきました。「法師旅館が、何故1300年続いてきたのか。よく考えると1300年も130年も変わらない。130年も13年も変わらない。13年も1.3年も変わらない。資源を大切にし、少しでも良くしようと一瞬一瞬を積み重ねていくことで、46代続いてきた。」と話されました。

長丁場の講義を終え、各自温泉に入ったのちに懇親会を行い参加者同士の親睦を深めました。

翌日は、毎朝6時45分から行われる46代目の朝の法話に合わせて起床し、シャトルバスで1時間ほどかけてヤマト醤油味噌に向かいました。

ヤマト醤油味噌は金沢市街地から車で20分ほどの場所に位置し、今年で創業108年を迎える企業です。2015年の北陸新幹線の開通に合わせて本社を改装し、料理教室や麹体験など行える施設を設け、お伺いした際も平日にも関わらず多数の観光客・お客様がいらっしゃいました。まずは施設内を案内いただき、その後に4代目の山本晴一さんに会社の歴史と今の事業内容についてお話いただきました。
金沢市大野町の一帯は昔から醤油業が盛んで、中でも一番歴史が古いのがヤマト醤油味噌さんとのこと。しかし、長年醤油を作っているだけではいつかは他社に負けてしまうという危機感から、味噌や麹に派生し加えて新たな商品開発やマーケティングに注力をされるようになったと言います。


社長の講義が終わり、食堂にて麹を用いて作られた発酵食美人ランチをいただき、お土産を購入した後に次の視察先うつのみやに移動しました。

うつのみやは明治12年に小松市にて文化の普及と速逹を社是に創業、社長の宇都宮元樹さんは現在4代目。創業時から書籍、紙文房具、学校用品、新聞等の販売を生業とし、出版事業も明治22年からスタートされました。その結果、金沢三文豪と呼ばれる室生犀星、泉鏡花、徳田秋声との関わりも生まれ、金沢の文化の発展の中核を担って来られました。また、昭和46年には書店から“文化の百貨店”へ発展を遂げるべく社名を「宇都宮書店」から「うつのみや」に変更し、楽器販売や音楽教室など事業を展開してこられたそうです。そして、平成28年には金沢市内に拠点を移し、金沢最古の書店としての歴史と文化にこだわった店作りを行い、「金沢文豪カフェあんず」をオープンし文豪とアルケミストとコラボしたイベントなども行い、今では幅広い年代の方に慕われる書店として展開をされています。Amazonなどの台頭もあり、書店は今後産業としては縮小に向かう傾向が強いですが、文豪とアルケミストのように今旬のものを取り入れどのようにコラボして発信していくかを考えることが重要で、これからも永く続けていく秘訣だと考えていると、お話を伺いました。


その後、一行は最後の視察先である北國銀行に向かいました。まず初めに北國銀行の大森さんより、地元の企業の繁栄を支えるための取り組みとして融資の他に事業承継や人材育成など経営者の課題解決を行うコンサルティング事業について説明をいただきました。

そして最後に、後藤代表理事より総括の講義を行い各参加者よりツアーに参加した感想を共有いただきました。 参加者からは、
「実際に現地に赴くことで、座学では見えてこなかったポイントにも気づくことができ大変勉強になりました。」
「視察先の呉投手だけでなく、参加者の方々からも2日間共にする中で多くの学びをいただくことができました。」
などの感想がありました。

次回は、2020年5月頃に第9回目のツアーを行う予定です。詳細確定いたしましたらご案内申し上げます。