活動報告

【第16回100年経営研究会】「ここで働きたい」と思われる会社を実現し、東海道宿場町の復活を目指す(登壇者:1596年創業/有限会社丁子屋)

2021年5月10日

2021年3月10日(水)、第16回100年経営研究会を開催いたしました。
今回の研究会では、慶長元年1596年に創業し、現在は静岡県で名物のとろろ汁を提供する有限会社丁子屋の14代目社長の柴山広行氏をお迎えし、丁子屋のこれまでの歴史や次の100年に向けての新たな取り組みなどについてお話しいただきました。
また、100年経営研究機構からは当機構代表理事で日本経済大学大学院特任教授の後藤俊夫先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。


登壇者の紹介

今回の登壇者である柴山氏の経歴からご紹介いたします。

<登壇者プロフィール>
有限会社丁子屋
取締役社長
柴山広行(14代目)
昭和53(1978)年9月生まれ。20代、大阪の大学卒業後、和太鼓チーム「大阪打打打団」に入団。2004年に兵庫県出身の薬師寺知子さんと出会う。2006年27歳で結婚、帰省、丁子屋入社。2013年、3児の父となる。2020年10月14代丁子屋平吉を襲名。地域の一員として妻と共に、子供食堂の応援やマルシェを運営。
2017年クラウドファンディングにて築400年の茅葺修復費用1,000万の支援金を集める。翌2018年に約40年ぶりとなる茅葺葺替事業を行う。
その他地域資源を生かした商品開発や、地元商店との連携を通して、人と人が繋がりや、やがて歴史や文化へと繋がる土壌作りを目指している。
座右の銘は「咲いた花見て喜ぶならば、咲かせた土の恩を知れ」。


第1部:トークセッション(有限会社丁子屋 取締役社長 柴山広行 氏 × 後藤俊夫 代表理事)

今回のトークセッションでは、「丁子屋のこれまでの歴史」や「次の100年に向けての取り組み」などについて柴山社長よりお話しいただき、対談を通じて学びました。

ポイント
1. ルール・価値観を明確にし、「柴山商店」から「企業としての丁子屋」へ
2. 「東海道五十三次」にも描かれる丁子屋としてのあり方と祖父が守った茅葺き屋根
3. みんなが安心できる場所であるために、丁子屋が丁子屋として、あり続ける


1. ルール・価値観を明確にし、「柴山商店」から「企業としての丁子屋」へ

柴山社長が現在取り組まれていることは、ルール・価値観をスタッフに分かりやすいように発信することです。
以前の丁子屋の状況について、現場にも入られている柴山社長の奥様が「閉鎖的な老舗で、社会は変わっているのに、会社の中は変わっておらずガラパゴス化していた」と言うように、以前の丁子屋はスタッフがそれぞれ異なったルールや価値観を持って接客や作業をしており、お客様に均一なサービスを提供できていないことが課題となっていました。
このような状況を改善するため、スタッフにとって分かりやすいように「営業」「やり方、仕組み」「設備」「ホール」「厨房」の5つに分けて、それぞれ作業の基準や評価制度などの整備を行い、社内の変革に取り組まれています。
また、定期的なミーティングを設けて、スタッフの方々と素直に意見を言い合う時間も確保されています。
このように丁子屋では、世代、男女、部署が異なるためにそれぞれが考えているルールや基準も異なるということを認識し、スタッフとの対話を重ねることによって強固な企業へと変革させています。


2. 「東海道五十三次」にも描かれる丁子屋としてのあり方と祖父が守った茅葺き屋根

丁子屋は歌川広重が書いた「東海道五十三次」にも登場しており、そこに描かれている風景こそが今後丁子屋が目指すべき姿だと柴山社長は言います。
祖父で12代目でもある信夫氏も「東海道五十三次」をみて「この浮世絵が丁子屋の原点であり、この風景を取り戻そう」と考え、養子という立場でありながらも一大決心し、浮世絵に描かれていたような茅葺き屋根に移築されています。
そして茅葺の全面葺き替え工事のため2017年にクラウドファンディングによって資金を募った結果、約500名の方々から計1,100万円の支援金が集まり、翌年にはその支援金をもとに、信夫氏が移築されてから約40年ぶりに茅葺葺き替え工事が実施されました。
この支援の多さこそが先代の方々がお客様や農家の方々との繋がりを大事にしてきた証です。今後も家族・お客様・取引先・次世代との繋がりと、浮世絵に描かれている風景を守っていくという役割を丁子屋は担っていきます。


3. みんなが安心できる場所であるために、丁子屋が丁子屋として、あり続ける

柴山社長は社内の活動だけでなく、地域全体を盛り上げるためにも尽力されています。
今後の展望も含め、具体的には下記のような取り組みをされています。
・2019年に地域の事業者の方と集まって「丸子活性しよう会」を結成し、全部で75店ある地元のお店でスタンプラリーを開催
・現代版「東海道宿場町」復活を目指して、各宿場町の事業者の方々と繋がりを作る
・自然薯生産が盛んでとろろ汁屋さんが多い静岡県をとろろ県としてPR
このような取り組みを通じて、経営理念である「みんなが安心できる場所であるために、丁子屋が丁子屋として、あり続ける」という考えを体現されており、家族・スタッフ・農家・地域・次の世代という関係を大切にして、「ここへ行きたい」ではなく「ここで働きたい」を思われるような会社を目指されています。


第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)

質疑応答では「“ここへ行きたい”と“ここで働きたい”」の違いについて当機構参与の和田氏よりご質問いただき、「顧客満足だけでなく従業員満足も両立すること。お客様だけでなくスタッフのことも考えて、スタッフが楽しく働ける環境を作ることが自分の役割」と柴山社長よりご回答いただきました。
最後に後藤先生より、「東海道宿場町復活の話だけでも夢が大きい。冷凍とろろの通信販売も事業としての広がりを感じる。ぜひ社長それから奥様も一緒になってますます頑張って元気に暮らし、成長していっていただきたい」と総括いただき、今回の研究会は終了いたしました。


次回は3月24日に、1921年創業の株式会社有馬芳香堂の事業開発部 部長の有馬康人氏にご登壇いただきます。