活動報告

【第56回100年経営研究会】栗菓子の老舗和菓子屋が協力し合いながら挑むまちづくり(登壇者:1808創業/株式会社桜井甘精堂)

2023年5月24日

2022年12月20日(火)、第56回100年経営研究会を開催いたしました。

 

今回の研究会では、1808年に創業された株式会社桜井甘精堂の9代目を務められ、現在は小布施町の町長である桜井昌季(さくらい まさき)氏をお迎えし、「小布施町で活躍する老舗和菓子店」「小布施町のまちづくり」「今後の展望」などについてお話しいただきました。

 

また、100年経営研究機構からは当機構代表理事で日本経済大学大学院特任教授の後藤俊夫先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。

 

 

登壇者の紹介

今回の登壇者である桜井氏の経歴からご紹介いたします。

 

<登壇者プロフィール>
株式会社桜井甘精堂 9代目
桜井 昌季(さくらい まさき)氏



1965年 長野県小布施町にて桜井佐七の次男として生まれる。
1987年(22歳) 北里大学十獣医畜産学部獣医学科中退
同年 株式会社ベルウェイ入社し、ビジネスビデオ販売・企業研修等マーケティングの基礎を学ぶ。
1990年(25歳) 株式会社桜井甘精堂 入社
2007年(42歳) 同 常務取締役 就任
2010年(45歳) 同 代表取締役/9代目 就任
2021年1月(55歳) 小布施町長 就任

 

 

第1部:トークセッション(株式会社桜井甘精堂 9代目 桜井 昌季(さくらい まさき)氏 × 後藤俊夫 代表理事)

今回のトークセッションでは、「小布施町で活躍する老舗和菓子店」「小布施町のまちづくり」「今後の展望」などについて桜井氏よりお話しいただき、対談を通じて学びました。

 

ポイント
1.小布施町を支える三大栗菓子屋
2.小布施の町全体で挑むまちづくり
3.町長として見据える小布施町の今後の展望

 

 

1.小布施町を支える三大栗菓子屋

小布施町には桜井甘精堂を含む、以下の3つの老舗和菓子店が観光業やまちづくりに大きく貢献しています。

・桜井甘精堂(1808年創業)
・竹風堂(1893年創業)
・小布施堂(1923年創業)

小布施町の栗菓子屋御三家は店舗販売以外にレストランも展開。

 

竹風堂は日持ちのする流通商品に特化し、レストランは短時間で満足してもらえるようなメニューを提供しているのが特徴です。

小布施堂は主に生菓子を販売しており、レストランでは少人数のグループに特化し、高級感のあるコース料理を提供しています。

そして、桜井甘精堂は地元のお客様に何度も足を運んでもらえるように、和と洋の幅広い商品を取り揃え、お茶と和菓子を楽しめる紅茶専門店も展開しています。

 

小布施町ではこれら3つの老舗企業が、それぞれが思う「小布施らしさ」を出しながらお店を展開していることで、地元の方から観光客まで幅広いお客様を誘客できているのが地域の特徴です。

そして、お互いライバルでありながら相談・協力も行い、街全体がより元気になることを目指して、まちづくりに貢献しています。

 

 

2.小布施の町全体で挑むまちづくり

小布施町では、老舗企業同士の横の繋がりが強いだけでなく、縦の繋がりも強いのが魅力です。

その一つとして、小布施町では年配の人が若者の挑戦を潰すことなくサポートしてくれる伝統があり、「〇〇をしたい!」と人の周りに仲間が集まりやすいのが小布施町ならではの魅力

そのため、町内でも頻繁に新たな動きが起こっており、それが地域の活性化に繋がっていると考えられます。

 

例えば、他の地域ではつい伝統的建造物を守ってしまう傾向があります。

しかし、小布施町では街の宝や資財を守るのではなく「どう活かし、どう遊ぶか」という”挑戦”の文化が受け継がれているため、建物がただ存在しているだけでなく有効的に活用されています。

こうした街全体の文化から、桜井氏自身も挑戦することの大切さを実体験として感じており、「それどうなの?」と感じるようなアイデアでも、実際に進めてみると面白かったり、そこから改善点が見えてきたりしたことがあるとお話しいただきました。

 

企業も地域も長く続くためには「まずはやってみる」という行動力が重要ですが、小布施町はそうした文化が根付いているからこそ、長寿企業が共存し、若者の挑戦が次々と生み出されているのでしょう。

実際に、小布施町には明確なランドマークはないものの、観光客のリピート率が圧倒的に高いのが特徴です。

小布施町には同じ業種でもバリエーションに富んだお店が揃っており、頻繁に新たな動きが行われていることで、外から来たお客さんは行くたびに違った景色が見られるのがリピート率の高さに繋がっています。

 

 

3.町長として見据える小布施町の今後の展望

横の繋がりが強い小布施町ですが、桜井氏はコロナウィルスの影響で今は町内の横のつながりが薄れていることを地域の課題として挙げました。

そのため、これまで小布施町が築き上げてきた町外や県外との繋がりをさらに強くし、地域のファンを増やしていくことを、小布施町長として目指されています。

 

その一つとして、小布施町を訪れた人たちがのんびり過ごし、英気を養って都会に帰っていただけるよう、湯治場のような施設の建設を検討。

そして、全国の高校生・大学生を対象に全国で開催されている「HLAB」というプログラムも実施しています。

「HLAB」は「学寮生活を中心としたリベラル・アーツ教育」をコンセプトに、東京都・長野県小布施町・宮城県女川町・群馬県の4箇所で、サマースクールを開催。

高校生・大学生が世代や国籍、分野を越えて互いから学ぶためのリベラル・アーツ教育を提供しており、小布施町では、地域で活躍する人々との交流を通じて地域における課題を知り、将来グローバルに活躍する人材の育成を目指しています

小布施町では「HLAB」により高校生や大学生との結びつきがより強くなっており、HLABに参加した若者が地域に新しい風を吹き込むことが期待されます。

 

また、今後については、海外との繋がりもさらに増やしながら、小布施町の発展に尽力していきたいとお話しいただきました。

 

 

第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)

質疑応答では、「街づくりを進める難しさや楽しさはあるのか」といった質問があり、「100万人が1回来る街より10万人が10回来る街にしたい。観光で集客するのではなく、町外に小布施町のファンを作るのがカギ」と桜井氏よりご回答いただきました。

 

最後に後藤先生より、「小布施町は若者や海外の人との交流が多く、インバインドやアウトバウンド、グローバリゼーションと切っても切れない関係にある。次は小布施町でお会いできることを楽しみにしています。本日はお忙しい中、ありがとうございました」と総括をいただき、今回の研究会は終了いたしました。

 

次回は2023年1月10日(火)に、マルソー株式会社の代表取締役社長である渡邉 雅之(わたなべ まさゆき)氏にご登壇いただきます。