第11回研究会「高梨家の事例に学ぶ、100年経営と企業ガバナンス」 2018年1月10日 2017年12月13日(水)六本木のハリウッド大学院大学にて、 第11回研究会「高梨家の事例に学ぶ、100年経営と企業ガバナンス」を実施いたしました。 今回は、NPO法人FBN(ファミリービジネスネットワークジャパン)理事長を務め、当機構理事の高梨一郎さんを講師に迎え、100年企業・ファミリービジネスの企業ガバナンスについて講演を行いました。 冒頭、高梨さんより「高梨家の歴史とキッコーマンの成り立ち」について説明がありました。 高梨家は、信州信濃を発祥として、平安時代まで遡る旧家です。代々の当主は「髙梨兵左衛門」を襲名しており、現当主は30代目に当たります。一族の家系図は厳重に保管され、各代の当主のみ閲覧が許されているそうです。 1661年、下総国上花輪村(現在の千葉県野田市上花輪)の名主であった19代高梨兵左衛門が醤油の醸造に着手したのが、醤油ビジネスの始まりと言われています。 その翌年、後にキッコーマンを共に創業することになる、茂木家初代七左衛門が近所で味噌醸造を始めます。のち1766年、5代目七左衛門の時代に醤油醸造へと転じました。 その後、茂木家・高梨家は婚姻関係を結び、代々醤油醸造を営む家系として、お互いの独立を保ちながら共存していました。 その関係性が変化したのが、1917年。1914年に勃発した第一次世界大戦による大戦景気で需要は急増しており、各醤油醸造家間の競争は更に激しくなっていました。そこで茂木・高梨一族は無用な競争を避けること、そして新しい時代の醤油メーカーとして覇を唱えるべく、同族8家を大同合併し、野田醤油株式会社(現在のキッコーマン)を設立しました。 勿論、8家の合併は容易には進みません。不満を爆殺させたのは家族ではなく従業員でした。労働環境の大変革に不満を感じた従業員は、216日間ストライキという大労働争議を起こし、反発をしました。 この経験がもととなり、キッコーマンでは社是である「産業魂」が生まれた、と高梨さんは言います。「利潤を目的とするのではなく、企業活動は社会の福祉、国家の進運に寄与すべき公共の義務を負っている」という考え方です。 合併後、キッコーマンは今年でちょうど創業100年を迎えました。高梨家はキッコーマン創業家の一つとして、今でも長男をキッコーマンへ送っています。 しかし、キッコーマンは脱同族会社経営を唱えており、 ・同族のキッコーマンへの入社は8家から一人に限定する。 ・社長は特定の一家で独占せず、一族のなかで一番経営能力のあるものを選ぶ。 ・創業家は社長人事には口出ししない。 このようなガバナンスのもと、創業家以外であっても優秀な者を社長に就任させる、という考えを貫き、経営を強化しています。この革新的な考え方こそがキッコーマン成長の源とも言えるでしょう。 他にも、高梨家では「東京コカ・コーラ」を傘下に持つ丸仁ホールディングスを経営しています。キッコーマンとは異なるガバナンスについても紹介があり、一概にファミリービジネスと言っても、企業によりガバナンス体制が異なることを学びました。 研究会終了後には2017年の忘年会も兼ねて、懇親会を行いました。懇親会には当機構の理事・監事、会員、研究会参加者の17名が参加し、交流を深めました。 次回の研究会の概要はこちらからご確認ください ツイート