活動報告

【第11回オンライン研究会】新たな花のプラットフォームを構築し、業界全体でフラワーロス解消へ(登壇者:1874年創業/株式会社ジャパン・フラワー・コーポレーション)

2021年1月12日

2020年12月23日(水)、第11回オンライン研究会を開催いたしました。
今回の研究会では、1874年に山文青果市場として創業し、現在は富山県を中心にお花の卸や販売を行う株式会社ジャパン・フラワー・コーポレーションの代表取締役社長の松村吉章氏(7代目)をお迎えし、新型コロナウイルスの影響下でお花や生産者を救うために行なった「2020スマイルフラワープロジェクト」の取り組みや、社史から紐解いたこれまでの困難を乗り越えてこられた要因などについてお話しいただきました。
また、100年経営研究機構からは当機構代表理事で日本経済大学大学院特任教授の後藤俊夫先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。


登壇者の紹介

今回の登壇者である松村社長の経歴からご紹介いたします。

<登壇者プロフィール>
株式会社ジャパン・フラワー・コーポレーション
代表取締役社長
松村吉章(7代目)
1969年1月1日生まれ。創業147年。1974年に富山を拠点に創業した「山文青果市場」より1996年生花部門を独立。スーパーを中心として70店舗を北陸で展開。
2010年クリエイティブ阪急のフラワー部門事業譲渡、ニチレイの花事業の再編、ラグジュアリーブランドバラ専門店ローズギャラリーの事業譲渡など上場企業4社の花部門再生を手懸け全て初年度より黒字化。数多くのコンサルティング実績を持ち、リポジション、リブランディング請負人として花業界の再編に取り組む。
コロナ禍には「2020スマイルフラワープロジェクト」「フラワーライフ振興協議会」を立ち上げ生産者支援に尽力すると共に、エシカル消費、SDGsをコンセプトにした新たな流通プラットフォームの構築を目指している。


第1部:トークセッション(株式会社ジャパン・フラワー・コーポレーション 代表取締役社長 松村吉章 氏 × 後藤俊夫 代表理事)

今回のトークセッションでは、松村社長就任後の社史を振り返りながら、「2020スマイルフラワープロジェクトやフラワーライフ振興協議会の立ち上げ」、「フラワーロス」などについて松村社長よりお話しいただき、対談を通じて学びました。

ポイント
1. 自分と会社を見つめ直し、経営理念という共通の目標を立て困難を乗り越える
2. フィロソフィが精神性と持続性を高め、長寿経営の基礎となる
3. コロナ禍での挑戦。花のプラットフォーム化でフラワーロス解消へ

1.自分と会社を見つめ直し、経営理念という共通の目標を立て困難を乗り越える

富山に本社を構え、フラワーショップチェーンとして花屋以外にもブライダル部門やフラワースクールの運営、コンサルティング業など幅広く行なっているジャパン・フラワー・コーポレーションですが、これまでの歴史の中でいくつかの苦難を乗り越えてこられています。
特に組織全体を改善するきっかけとなった苦難として、松村社長が就任して2,3年目の時、まとめて社員が辞めていくということがありました。
辞めていく社員に対してなぜ辞めるのかをヒアリングし会社のあり方を改め、経営理念の作成や定期採用、労働環境の整備を行なった結果、8期目には50店舗体制となり、県内シェア50%を獲得し、この当時経営理念に共感して入社した社員が今の幹部となっていることもお話しいただきました。

2.フィロソフィが精神性と持続性を高め、長寿経営の基礎となる

松村社長は長寿経営を実践されている中でこれまでにいくつもの実績を残されています。
・クリエイティブ阪急を阪急電鉄より事業譲渡→直前期1億円の赤字からV字回復に成功
・ハイサービス日本300選 受賞
・はばたく中小企業 受賞
・ローズギャラリーを伊藤忠商事より事業譲渡(直前期売上3.5億円、赤字1億円)→初年度から黒字化に成功
今回、松村社長が準備してくださった資料の中には数々のフィロソフィが紹介されており、その数々のフィロソフィがこれだけの実績を生み出すために重要となってきます。
例えば、「2020スマイルフラワープロジェクト」とともに紹介されているフィロソフィには” 事業の目的、意義を明確にする 公明正大な大義名分を 高い目的を立てる”があり、上記で紹介した大量離職が発生した時には” 感謝の気持ちを持つ”がフィロソフィとして説明されていました。
松村社長にはこのようなフィロソフィであり考え方が根底にあるからこそ、今回のコロナショックでも高い精神性を保ちながら誰よりも早く行動し、持続的に結果を出しつづけることができると考えられます。

3.コロナ禍での挑戦。花のプラットフォーム化でフラワーロス解消へ

今回の新型コロナウイルスの影響によって、花業界も大打撃を受けました。
そこで松村社長は新型コロナウイルスの影響によって破棄されてしまう生花とその生産者を救うために「2020スマイルフラワープロジェクト」、「フラワーライフ振興協議会」を立ち上げます。 2020年4月に始動した「2020スマイルフラワープロジェクト」では、市場で買い手がつかなくなった花を農家から直接買い取り、25~500本単位で箱売りを行いました。
また、インターネットを活用することで全国各地から注文を受け付け、首都圏では花のドライブスルーも実施されております。
母の日にドライブスルーを実施したことがメディアにも取り上げられ、日経PLUSにも掲載された際には1日に1万の受注があり、多くの反響があったことが伺えます。
それから、2020年9月には「フラワーライフ振興協議会」が立ち上げられ、国宝や世界遺産などの主要観光地を中心として、全国20ヵ所以上で催しを実施計画されています。
こちらもNHKや、奈良の興福寺での事例が朝日新聞で取り上げられています。
さらには業界最大手の日比谷花壇と提携し、料金プランに応じて店舗で花を受け取ることができるアプリを使ったサービスも展開されております。
あえて業界最大手のライバルである日比谷花壇と提携したことからもわかるように、フラワーロスの問題は日本だけでなく世界共通で存在している課題であり、花のプラットフォーム化とフラワーロスの解消に向けて、業界全体が良くなるように日々取り組まれています。


第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)

質疑応答では、「日比谷花壇は結婚式や葬儀で使われる長い花を扱っている一方で、ジャパン・フラワー・コーポレーションはカジュアルなフラワーを扱っている」という企業ごとの強みの違いや、「長寿企業を支えるためには絶対に諦めない精神性やロジカルシンキングなどによる持続性が基礎として必要」ということ、「花業界でも技術開発は進んでいて、お花の期限を明記して販売している海外企業もある」といったフラワーロスに関する質問にも松村社長よりご回答いただきました。
最後に後藤先生より、ジャパン・フラワー・コーポレーションがライバルである日比谷花壇と提携できた理由について、「信頼関係が無いと提携もできない。アンケートで95社から回答を頂いたが、他の100年企業からもピンチはチャンスだということ、いかに早く対応できるかという回答があった。そのなかでも、松村社長は一番行動が早かった。」と総括いただき、今回の研究会は終了いたしました。


次回は1月13日に、1906年創業の株式会社佛英堂、専務取締役の野呂英旦氏にご登壇いただきます。