【第17回100年経営研究会】食を通して地域全体を盛り上げていける200年企業に(登壇者:1921年創業/株式会社有馬芳香堂)
2021年5月11日
今回の研究会では、1921年に創業し、ナッツ・豆菓子などの販売を行う株式会社有馬芳香堂の事業開発部の部長である有馬康人氏をお迎えし、これまでの歴史や次の100年に向けての挑戦などについてお話しいただきました。
また、100年経営研究機構からは当機構代表理事で日本経済大学大学院特任教授の後藤俊夫先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。
登壇者の紹介
今回の登壇者である有馬氏の経歴からご紹介いたします。<登壇者プロフィール>
株式会社有馬芳香堂
事業開発部 部長
有馬康人
1985年生まれ。2008年11月公認会計士試験合格、2010年3月早稲田大学大学院会計研究科を卒業し、新日本有限責任監査法人に入所。公認会計士として上場企業及び大企業の法定監査に従事。
2014年3月に有限責任監査法人トーマツに入所。スタートアップの会計監査や上場支援を主に行う部署に配属され、会計監査以外にベンチャー支援業務、地銀や地方自治体との中小企業支援業務など幅広い領域の事業に携わる。
2018年9月には家業の有馬芳香堂に入社し、父である現社長の元、事業開発部や100周年プロジェクトの立ち上げなど新たな取組を社内で推進している。
第1部:トークセッション(株式会社有馬芳香堂 商品・製造本部 本部長 有馬康人 氏 × 後藤俊夫 代表理事)
今回のトークセッションでは、有馬芳香堂の「これまでの歴史」や「次の100年に向けての取り組み」などについて有馬本部長よりお話しいただき、対談を通じて学びました。ポイント
1. 父の先見の明。ピンチをチャンスに変えた3つの意思決定
2. 次の100年に向けた新たな取り組み。いち企業としてではなく街ごと発展へ
1. 父の先見の明。ピンチをチャンスに変えた3つの意思決定
有馬芳香堂は神戸市内の路面店で豆菓子を販売し始めて以降、今年で100周年を迎える長寿企業ですが、有馬部長の父で現社長(3代目)の代がこれまでの歴史の中で最も業績を伸ばしています。大きく業績を伸ばすことができた理由として、社長の3つの意思決定が大きく影響していると考えられます。
1.デパートからスーパーマーケットへの販路拡大
2.健康食品としてナッツを販売
3.リーマンショック渦で製造工場を新設
1つ目にデパートからスーパーマーケットへ販路を拡大したことによって、1990年代に始まったデパートの衰退による影響を避けることができ、スーパーマーケットの市場拡大の波に乗ることができたこと。
2つ目に「お酒の肴」というイメージのあったナッツが「健康食品」として認知され始めたところに目をつけたこと。
3つ目に2012年に、リーマンショックで苦しい状況でありながらも工場新設という攻めの決断をしたことによって、ナッツが健康食品として購入されマーケットが拡大していく流れに対応することができたこと。
こうした社長の先見の明、そしてピンチをチャンスと捉える攻めの意思決定によって100年という長寿経営を実現していると考えられます。
2. 次の100年に向けた新たな取り組み
有馬部長は100周年プロジェクトチームの責任者を担っており、次の100年に向けた取り組みについてもお話しいただきました。100周年プロジェクトチームは「チームありがとう」「チームわくわく」「チームチャレンジ」の3つのチームを結成し、それぞれ様々な企画を進めています。
・「チームありがとう」…感謝を大切にする組織を作っていくことをコンセプトに、お客様還元企画、記念商品の開発に取り組む。
・「チームわくわく」…楽しく仕事をする組織を作っていくことをコンセプトに、記念式典、キャラクター作成に取り組む。
・「チームチャレンジ」…200年企業に向かって失敗を歓迎する組織を作っていくことをコンセプトに、キッチンカー導入に取り組む。
また、有馬部長は事業開発部の責任者として、「食を通して賑わう場を作りソウルフードを生み出す」ことをビジョンに掲げ、2021年4月には創業の地でもある神戸に『Nuts Lab』をオープンされています。
ラコリーナ近江八幡を通じて近江八幡市の街づくりを進めている『たねやグループ』や、清澄白河がカフェの街として認知されるきっかけをつくりコーヒーを通じて町おこしに繋げることができた『ブルーボトルコーヒー』のように、いち食品メーカーとしての役割だけでなく、地域ぐるみで賑わう場所をつくっていけるような200年企業を目指しているとお話しいただきました。
第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)
質疑応答では、主に以下のご質問をいただき有馬部長よりご回答いただきました。1.Q「曽祖父と曾祖母が二人で事業を始めたきっかけ」
A「当時、曽祖父が税関で働いており、豆類の輸入などを見ていたところから着想を得て、その着想から実際に曾祖母が豆を炒ってお客様に提供し始めたことが事業の始まり。」
2.Q「プロジェクトチームのメンバーは兼務しているのか、専従なのか」
A「プロジェクトチームのメンバーはそれぞれ営業や製造をメインでしながら兼務で100周年プロジェクトを進めている。」
3.Q「お兄様が取り組んでいる海外での事業」
A「1から事業を立ち上げ経営者としての目利き力をつけるために、1年前にマレーシアに異動し、東南アジアを中心にマーケットを開拓している。」
最後に後藤先生より、「今回は100年という節目を迎える企業が、100周年をどのように捉えているのか。また、今後の100年を見据えて200年企業になるためにどういうことを取り組んでいるのかという点を具体的に知れてよかった。今後とも頑張ってほしい」と総括いただき、今回の研究会は終了いたしました。
次回は4月13日に、当機構代表理事の後藤俊夫先生が登壇し、長寿企業研究を始めたきっかけや長寿企業経営の共通点などについてお話しいただきます。