活動報告

【第10回視察ツアー】【第24回100年経営研究会】1300年続く城崎温泉に学ぶ、城崎温泉視察ツアー2021 開催報告

2021年7月15日

2021年7月5日(月)・6日(火)、当機構主催の第10回視察ツアーとして「城崎温泉視察ツアー」を開催いたしました。本ツアーは、全国各地100年超企業や地域に訪れ当主や専門家からお話を伺う中で、“長寿経営の秘訣”を学ぶことを目的としています。
今回は、昨年で開湯1300年を迎えた城崎温泉にて、古まん・三木屋・山本屋・西村屋など城崎温泉を代表する宿泊施設のほか、城崎温泉のルーツである温泉寺の歴史や城崎温泉発展の秘訣について学びました。


①「オリエンテーション」

一行は7月5日(月)の午後に創業1304年の宿泊施設、古まんへ集合。到着後は、古まんにてオリエンテーションと講義を行いました。まず事務局から本ツアーの趣旨の説明を行い、次に参加者の皆様から自己紹介をしていただき、その後、100年経営研究機構の後藤代表理事が全体の見どころについて説明を行いました。


②講演「100年経営研究の意義と展望」(講師:赤池 学 氏)

今回のツアー最初の講演として、株式会社ユニバーサルデザイン総合研究所所長の赤池学様に「100年経営研究の意義と展望」と題して講義いただきました。この講義のポイントは以下の通りです。

ポイント
1. 多様なシェアを実現する方法(Creating Shared Value)
2. 21世紀経営の循環について
3. ハーバード大学マイケルポーター教授の発言


1. 多様なシェアを実現する方法(Creating Shared Value)

多様なシェアを実現するためには、意味と価値のイノベーションを通じ、ステークホルダーとの補助線を引き直し、新しい価値の連鎖を想像することが大切であると赤池所長はおっしゃいます。そして、民間、公共、市民社会の3つのセクターの垣根を超えて活躍、協働するリーダー育成するべきであると結論づけていました。


2. 21世紀経営の循環について

先ほどの内容と関連がありますが、見えているユーザだけでなく様々なステークホルダーとの利益も考える必要があります。様々なステークホルダーに利益を及ぼすには、彼らと深く関わる必要があり、深く関わると、ステークホルダーは自分が関わる商品に対して深い関心を抱くようになります。すると、ステークホルダーが自ずとインフルエンサーへとなり、経営が循環します。深く関わることは大変なことですが、この関係はずっと続いていき、その結果得られる効用は大きいとおっしゃっていました。


3. ハーバード大学マイケルポーター教授の発言

マイケルポーター教授の発言を引用されました。
『これからの企業に望まれていることは、ユニークになるために戦うことである。
そのためには、過去の成功例、失敗に囚われず、ユニークな事業を構想すること。
それを社会実装する、ユニークなバリューチェーンを構想すること。
最後に最も大切なことは、やらないこと、を決めることである。』

つまり、ユニークな事業を展開するにつれて、やりたいことが多角化していきますが、闇雲に広がる前に、どこに主軸を置くべきか自身で見極め、「やらないこと」を決めることが大事であるとおっしゃって講義を終えられました。


③パネルディスカッション ※第24回100年経営研究会

後藤代表理事のファシリテーターのもと、城崎温泉の関係者をお招きし、パネルディスカッションを行いました。また、この内容は、第24回100年経営研究会としても会員の皆様に配信いたしました。


パネルディスカッションの登壇者

ファシリテーターは後藤代表理事が務め、パネリストは
城崎温泉観光協会会長であり有限会社山本屋代表取締役でもある高宮 浩之様

株式会社西村屋代表取締役の西村 総一郎様

温泉寺住職の小川 祐章様

三木屋の10代目主人の片岡 大介様

の4名です。

冒頭、後藤代表理事より城崎温泉の概要と、他の温泉街と城崎の違いについて解説いただき、パネルディスカッションに入りました。

パネルディスカッションのポイントは以下の通りです。

1. 昔の城崎温泉

温泉には限りがあるため、各々が引くと温源が枯渇する可能性もあり、城崎温泉では外湯主義で運営されていました。しかし、戦争や1946年に起こった北但大震災などの影響を受け外湯だけでは経営が厳しくなり、三木屋は自身の宿泊施設に温泉を引くことによって、内湯営業を行おうとしました。内湯反対運動が起こり、約23年もの間内湯紛争が続きましたが最終的には、和解により収束しました。
このような事態も踏まえ、“共存共栄”の精神から城崎温泉では泉源の管理の方法として「集中管理システム」を導入し、城崎温泉ではどの温泉でも同じ湯が使われており共通の資源として湯を活用しています。
現在は、他の温泉地域と戦っていかなければならないという決断のもと、メインは外湯形式ですが、小規模の内湯を認めています。


2. 本と温泉

2013年の「志賀直哉 来湯100周年」を記念して、城崎でしか買えない本を有名作家とともに、これまで4冊発行しています。
湊かなえ氏など有名作家が城崎を応援しており、湊氏は「城崎へかえる」を執筆されました。アマゾンなど通販サイトでどこでもすぐに本が買える時代に、現地まで行かなくては買えないことに、多くの作家が可能性を見出しているとおっしゃいます。


3. 城崎全体が一つの旅館

養老元年に城崎の地に来た道智上人が、一千日間ご修行をされた功徳によって、城崎温泉が湧き出たと言われています。道智上人のおかげで湧き出た温泉は湯治として利用され、温泉は個人のものではなく、城崎みんなのものである。そのような考えから、外湯主義を貫いてきました。現在は城崎温泉を観光地とし、外湯主義と共存共栄の考え方のもとお土産屋や飲食店など地域一帯で発展していっています。つまり、「城崎全体が1つの旅館」となっています。

パネルディスカッションを終え、各自外湯巡りをして城崎温泉を満喫しました。その後、コロナ対策を十分に講じながら懇親会を行い、参加者同士の親睦を深めています。


パネルディスカッション終了後、今回の参加者及び登壇者の皆様との懇親会を行いました。

城崎温泉を代表し、高宮会長に乾杯のご発声をいただき、美味しいご飯と共に2時間親睦を深めました。
最後には、会場を提供いただきました古まんの日生下民夫社長からもご挨拶を頂戴した上で、機構の大髙英昭会長より閉会のお言葉をいただき、懇親会を終えました。

その後は各自外湯廻りや参加者同士の交流を深める時間となりました。


④2日目:施設や企業の視察・講義

7:00から外湯の営業が開始するため、朝から各自で外湯を楽しむところから2日目がスタート。

外湯を楽しんだ後は、温泉寺へ視察に向かいます。温泉寺は、養老4(720)年に城崎温泉を開いた道智上人により天平10(738)年に開創されたお寺です。前日のパネルディスカッションにもご登壇いただいた温泉寺の住職の小川様に境内を案内していただきながら、温泉寺の歴史を学びました。

一昔前までは温泉寺に参拝をして、柄杓をもらってから城崎温泉巡りをするのが作法であったようです。

温泉寺を出た後、山本屋へ移動し、湯島財産区に関する講演を豊島市役所の温泉課長の山田和彦様にしていただいた後、昨日のパネルディスカッションにもご登壇いただいた観光協会会長の高宮様にも「観光協会の概要と地域での役割について」というテーマでご講演いただきました。

城崎では、浴衣が正装であり、1994年のゆかたのファッションショーをきっかけにゆかたが似合う街づくりをスタートしました。今では日本一「ゆかたが似合うまち」として国内外から高い評価を得ています。色浴衣を着ての散策も城崎温泉発祥とも言われています。

講演後は、高宮会長が当主を務める老舗旅館山本屋が経営する食事処GUBIGABUへ移動し昼食を取った後、前日のパネルディスカッションにご登壇いただいた三木屋の当主の片岡様に三木屋の館内を案内いただきました。
三木屋は志賀直哉の小説「城の崎にて」が生まれた旅館です。一行は、志賀直哉が泊まった館内を見学させていただきました。

その後古まんに移動し、最後に藤村事務局長と後藤代表理事から総括いただき、参加者よりツアーに参加した感想を共有いただきました。
参加者からは、
「円滑な運営のおかげで学びが多いツアーとなった。実際に足を運んで学ぶことの重要性を感じました。」
「優秀な経営者の方々と濃密に会話をすることができ繋がりを持てたことは、私にとってかけがえのない財産です。」
などの感想がありました。


次回は、2021年11月頃に第11回目のツアーを行う予定です。詳細確定いたしましたらご案内申し上げます。