【第38回100年経営研究会】多角化経営で地域との共存を目指す長寿企業の成功要因とは(登壇者:1830年創業/株式会社星野又右衛門商店)
2022年2月25日
2022年2月8日(火)、第38回100年経営研究会を開催いたしました。
今回の研究会では、1830年に山本屋を屋号として創業され、1951年に法人化された株式会社星野又右衛門商店の代表取締役である星野健太氏をお迎えし、時代に合わせて業種・業態を変化させながら、現在は6社10業種を展開されている星野又右衛門商店の、「事業を多角化されてきた背景や成功要因」などについてお話しいただきました。
また、100年経営研究機構からは当機構代表理事で日本経済大学大学院特任教授の後藤俊夫先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。
登壇者の紹介
今回の登壇者である星野代表の経歴からご紹介いたします。
<登壇者プロフィール>
株式会社星野又右衛門商店 代表取締役・8代目
株式会社オペレーションカンパニー 代表取締役
星野 健太
1983年6月22日生まれ。
2006年立教大学経済学部卒業。
2008年株式会社星野又右衛門商店 代表取締役に就任。
2021年度 公益社団法⼈埼⽟中央⻘年会議所 理事⻑
2022年度 公益社団法⼈⽇本⻘年会議所 国際グループ担当常任理事
など青年会議所の活動にも積極的に関わり、星野又右衛門の8代目。
第1部:トークセッション(株式会社星野又右衛門商店 代表取締役 星野健太 氏 × 後藤俊夫 代表理事)
今回のトークセッションでは、時代に合わせて業種・業態を変化させながら、現在では6社10業種を展開されている星野又右衛門商店の、「事業を多角化されてきた背景や成功要因」などについて星野代表よりお話しいただき、対談を通じて学びました。
ポイント
1.グループ全体で6社10業種。多業種を展開する長寿企業「星野又右衛門商店」
2.多角化の背景と、200年近く続く長寿経営の成功要因とは
3.【次の100年に向けて】適度な規模で時代に合わせて変化する連携した共同体へ
1.ホシマタグループ全体で6社10業種。多業種を展開する長寿企業「星野又右衛門商店」の歴史について
現在では6社10業種を展開されている星野又右衛門商店では、長寿企業の中では珍しい多角化経営を実践されており、これまでにも時代に合わせて業種・業態を変化させてきた歴史があります。
星野又右衛門商店は1830年に、鎌倉街道原市宿(現在の埼玉県上尾市)にて屋号を山本屋として創業し、創業当初は貸し布団業、お針子教室などを行われていました。
その後1880年には、現在の基幹事業である肥料業と生産物集荷業を始め、そこから倉庫業・プロパンガス業・宿泊業・植栽管理業・飲食業・介護事業へと多角化し、200年近い歴史の中で時代に合わせながら次々と事業を展開されています。
また、星野又右衛門商店の8代目である星野代表は高校1年生の時からアルバイトを掛け持ちし、大学卒業後は商業施設のコンサルティングやテナントリーシングなどを行っている企業に就職したことで、高校時代から様々な業種に触れながら各業界に関する知識を貯められてきました。
高校時代から継続して多業種に触れた経験により、星野代表は2008年に家業に入社された後も不動産事業開発を進めつつ飲食やサービスの多角化もされており、2013年から代表取締役を務められています。
2.多角化の背景と、200年近く続く長寿経営の成功要因とは
星野又右衛門商店の多角化経営の背景として、業種業態ではなく地域を軸に考えてきたことが関係しており、地域での存在感を高めてきたからこそ地域と共存しながら8代続けてこられたと考えられます。
一方で、一つ一つの事業自体を上手く軌道に乗せるための工夫も必要になってきますが、星野又右衛門商店では下記の4つのポイントが事業継続の秘訣として受け継がれていました。
- ・社業と家業の分離
- ・新規事業展開で情報収集
- ・他業種展開のポイント
- ・撤退のタイミング
「社業と家業の分離」
星野又右衛門商店では、事業継承者である星野代表とご兄弟が事業展開をしている社業を行い、それまで社業を担っていた先代が早期に引退したのちに資産管理の家業を行うという分業を行っています。
「新規事業展開で情報収集」
常に新規事業に対するアンテナを立て、パートナーから情報を得ることによって新たなビジネスチャンスを掴み、新規事業を展開するというサイクルを生み出すことができます。さらに、星野又右衛門商店は多くの業種・業態で事業を進めていることからそれだけ多くのパートナーから情報を手に入れることができ、より時代のニーズに合った新規事業を展開することができます。
「他業種展開のポイント」
”地域を軸に考え、地域での存在感を高めてきた”と先述しましたが、事業を展開する際に1業種のシェアを広げるのではなく、地域の中のシェアを広げるために業種を増やすということを念頭に置かれています。地域を軸に考えて業種を増やすことによって、時代にそぐわない業種を諦めることができ、さらにそこから得られる情報を自社に活かすことができます。
「撤退のタイミング」
新規事業を始める時ももちろん重要ですが、本当に必要なのは事業を撤退するタイミングです。星野又右衛門商店の200年近い歴史の中でも、多業種を展開する一方でリース販売業や農作物集荷業、訪問介護業など、廃業した事業が存在します。
大きな投資をしていると「もう少し、あと少し」とズルズル赤字を積み上げてしまう可能性がありますが、星野又右衛門商店では投資する金額やルールを決めた上で事業を進めているため、時代の潮流を見極めて素早く撤退を決断することができています。
1事業だけだと撤退のタイミングを見極めるのが困難ですが、星野又右衛門商店では多業種を展開し、なおかつ地域を軸に考えているからこそ、最適なタイミングで撤退を判断することができると言えます。
3.【次の100年に向けて】適度な規模で時代に合わせて変化する連携した共同体へ
最後に、次の100年に向けてについてもお話しいただきました。
星野代表は「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは変化できる者である」というチャールズ・ダーウィンの言葉を引用し、時代に合わせて変化しながらさらなる長寿企業になれるよう多角化経営を実践されています。
時代の先を読みながら必要とされている業種を選定し、既存事業と連携させていくことで、1つ1つの会社や事業が小さくとも共同体として繋がり合いながら、大きな事業を進めている企業よりも変化しやすい状態で地域と共存していくことが可能です。
ゆえに、適度な規模で時代に合わせて変化する連携した共同体となることを目指しながら、次の100年に向けて多角化経営を実践していきたいとお話しいただきました。
第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)
質疑応答では、「家族経営のメリット・デメリット」について質問があり、「特にお金の管理においてメリットを感じている。大きなお金を扱うこともあるが、家族であれば信頼して任せることができる。一方で、デメリットとしては仕事とプライベートとの分離がないこと。年末年始などの長期休暇でも、会社に何か問題が起きた時のために親子で休日が被らないようにしており、必ず家族の誰かが上尾市にいる」と星野代表よりご回答いただきました。
後藤先生からも「率直に相談ができる第三者はいるか」について質問があり「最初に入った会社の上司や青年会議所に入っている方とは、現状の状況やこれから取り組もうと考えていることなどについて定期的に相談をしている」と星野代表よりご回答いただきました。
最後に後藤先生より「毎日毎日が戦いだと思いますし、ドラッガーが言うように率直に相談ができる第三者を持つということはすごく重要だと思います。本日はありがとうございました。」と総括をいただき、今回の研究会は終了いたしました。
次回は2月22日(火)に、1652年創業の株式会社道明の代表取締役である道明葵一郎氏にご登壇いただきます。