【第42回100年経営研究会】幾多の苦難を乗り越え売上150%増を達成した船宿あみ達の長寿の秘訣(登壇者:1916年創業/有限会社船宿あみ達)
2022年4月15日
2022年4月12日(火)、第42回100年経営研究会を開催いたしました。
今回の研究会では、1916年に創業された有限会社船宿あみ達の女将(4代目)である高橋並子氏をお迎えし、船宿あみ達の「これまでの歩み」「苦境をどのように乗り越えてこられたのか」「今後の展望」などについてお話しいただきました。
また、100年経営研究機構からは当機構代表理事の後藤俊夫先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。
登壇者の紹介
今回の登壇者である高橋女将の経歴からご紹介いたします。
<登壇者プロフィール>
有限会社船宿あみ達
女将(4代目)
髙橋並子(たかはし なみこ)
沖縄県那覇市で6人兄姉の末っ子として誕生。
桜美林大学国際学部卒業のち、ソフト部品メーカー『千代田インテグレ株式会社』の営業事務で新卒にて入社。
結婚出産を機に退職し、夫の家業である『有限会社船宿あみ達』にて4代目女将として入社。
2人の息子にも恵まれ、母であり、妻であり、女将という3つの役割を担う。
会社の売り上げは年々伸びており、世代交代をしてからは2億円売上アップの1.5倍の売り上げアップを達成。
そんな順調な中、同業他社にてクラスターが発生したという報道がされ、売り上げが前年比マイナス99%に。そんな中、前向きに行動したことがマスコミに多く取り上げられる。
第1部:トークセッション(有限会社船宿あみ達 女将 髙橋並子 氏 × 後藤俊夫 代表理事)
今回のトークセッションでは、有限会社船宿あみ達の「これまでの歩み」「苦境をどのように乗り越えてこられたのか」「今後の展望」などについて高橋女将よりお話しいただき、対談を通じて学びました。
ポイント
1.創業106年目の船宿あみ達と高橋女将(4代目)の歩み
2.頑張れば頑張るほど社内は悪化。苦難を乗り越え、売上150%増を達成した秘訣とは
3.コロナショックで売上99%減も、再び苦難を乗り越え次の100年へ
1.創業106年目の船宿あみ達と高橋女将(4代目)の歩み
1916年(大正5年)に創業し、もともとは投網で漁業をされていた船宿あみ達ですが、現在は「川と調和する」を理念に、国内最大規模となる大型屋形船8隻を保有し、春は花見、夏は花火、秋は紅葉、冬は忘年会シーズンと、年間を通じて季節ごとに違った魅力をお客様に提供されています。
船宿あみ達は有名芸能人も利用することが多く、最近では人気YouTuberが屋形船で撮影を行うケースも増えていると言います。
一方、あみ達の4代目・高橋悟氏の妻であり、2人兄弟の母でもある高橋女将は、6人兄妹の末っ子として沖縄県で出生し、子供の頃は経済的に苦労されたものの、お母様や兄姉の支援もあり、大学進学とともに上京されました。
そこから大学時代の派遣アルバイトで高橋代表と出会い、結婚して女将になることを前提にお付き合いを始めましたが、大学卒業後は「将来、会社の経営を良くしたい」との考えから、一度あみ達とは違う会社に就職され、その後、結婚と同時に女将として家業に入り、今日に至られています。
2.頑張れば頑張るほど社内は悪化。苦難を乗り越え、売上150%増を達成した秘訣とは
こうしてあみ達に入社した高橋女将ですが、入社した当初は社内で”経営者 対 社員”という構図ができており、お客様からのクレームが多い上に不満や揉め事も絶えないなど、あみ達の経営状況はかなり悪化していました。
高橋女将は社内状況を改善し会社を守るために、女将として社員に対して厳しく接しますが、頑張れば頑張るほど関係性は悪化するばかりで、当寺は辞めていくスタッフも多かったと言います。
しかしある時、経営者として会社を良くするためにアチーブメント株式会社の「戦略的目標達成プログラム頂点への道」を受講した結果、会社として目指すべき理想の姿が明確になり、良好な人間関係と高い業績の両方を手にするという決意をされます。
この時の決意から、社員と良好な関係性を作るために日々の雑談を通じて社員の意見を汲み取ろうと行動を起こします。
その結果、社員との関係性が良くなった上、社員や現場スタッフから提案が出てくるようになり、徐々にお客様満足度の向上・リピーターの増加・新規客の増加という流れが生まれるようになりました。
さらには、SEO対策やリスティング広告など、ITを活用して集客力を高めつつ、少人数でも気軽に乗れるように乗り合い船を強化したり、インバウンド集客のためにベジタリアンメニューや魚介を使わないメニューを取り入れた食事対応をしたりなど、サービス面でも様々な工夫が進められています。
社内の状況が良くなかった時は社員が3ヶ月で退社したり、アルバイトが無断欠勤したりするなど続出していましたが、そこから業務や社風を改善した結果、売上150%増、社員数130%増、アルバイト数150%増を実現されています。
こうして経営状況が良くなかった状況を好転させてきた高橋女将は、「経営者が仕事を楽しいと思える環境づくりができていること」、「変えてはいけないことと変えるべきことを区別して、時代に順応した経営戦略が行えていること」が長寿経営の秘訣だとお話しいただきました。
3.コロナショックで売上99%減も、再び苦難を乗り越え200年企業へ
最後に新型コロナウイルス感染症の影響と、今後の展望についてもお話しいただきました。
新型コロナウイルス感染症が全国で蔓延し始めた2020年4月には、同業他社でクラスターが発生したことで「屋形船は新型コロナウイルスが感染しやすい」といった報道も出始め、その影響で売上が99%減となるなど、かなりの苦難に陥っていました。
しかし、高橋女将は「絶対に乗り越えてやる」との思いで奮起し、屋形船に有名パティシエを呼んでコラボレーションを行ったり、屋形船業界初のバーベキュー屋形船を実施したりなど、他にも下記のような様々な取り組みを実施されました。
・天丼のテイクアウト、デリバリー
・ブランドアジを釣って、加工し、ネット販売
・クラウドファンディングで目標金額の10倍である350万円達成
・補助金を活用し、ECサイトを設立
前向きに新たな取り組みを次々と進めているうちに、今ではメティアにも多く取り上げられ、良い報道も増えてきました。
また、今後拡げたい事業として「こどもみらい館」(東京都江戸川区)と連携し、屋形船に乗って水辺の生き物を観察しながら、舟遊びの文化や歴史を子どもたちにを伝えていきたいと考えられています。
さらには、学校などと連携して体験型学習ができるような教育コンテンツの開発、SDGsとして自然を豊かにして持続的な社会活動を実現するために、屋形船の活動とともに川が綺麗になるような仕組みなどを作っていきたいとお話しいただきました。
第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)
質疑応答では、「屋形船は業界としては飲食業か旅行業、どちらになるのか」について質問があり、「飲食業でもあり旅行業でもあるため、飲食業と旅行業の中間だと思っている」と高橋女将よりご回答いただきました。
最後に後藤先生より「貴重な時間を頂戴しまして、色々なお話を聞かせていただきました。大変なことも多いかと思いますが、頑張っていただきたい。ありがとうございました。」と総括をいただき、今回の研究会は終了いたしました。
次回は4月26日(火)に、1892年創業の株式会社ゴトウ花店の代表取締役社長である後藤尚右氏にご登壇いただきます。