【第46回100年経営研究会】創業115年をむかえて人づくりの家づくり~建築技術者・技能者の育成~(登壇者:1907年創業/大野建設株式会社)
2022年6月21日
2022年6月16日(木)、第46回100年経営研究会を開催いたしました。
今回の研究会では、1907年に創業された大野建設株式会社の代表取締役社長である大野 哲也氏をお迎えし、「先義後利で人の夢づくり第一主義」や「年輪経営で永続を目指すこと」などについてお話しいただきました。
また、100年経営研究機構からは当機構代表理事で日本経済大学大学院特任教授の後藤俊夫先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。
登壇者の紹介
今回の登壇者である大野 哲也氏の経歴からご紹介いたします。
<登壇者プロフィール>
大野建設株式会社
代表取締役社長
大野 哲也(おおの てつや)
埼玉県行田市出身、45歳。
家族は妻(45)・長男(8)・次男(4)・にこまる(♀)
2000年に立教大学経済学部経営学科在学中にITベンチャー事業に参画。卒業後大手IT企業に入社。
その後2005年に大野建設(株)に入社。営業・経営企画職を経て2021年8月代表取締役社長に就任。
大野建設は大工で創業して115年。地域密着の工務店として「お役立ち」を重ね、地域のニーズとともに総合建築工務店へ。
信念は「先義後利で人(お客様・社員)の夢づくり第一主義。年輪経営で永続を目指す。」
第1部:トークセッション(大野建設株式会社 代表取締役社長 大野 哲也(おおの てつや)氏 × 後藤俊夫 代表理事)
今回のトークセッションでは、「先義後利で人の夢づくり第一主義」や「年輪経営で永続を目指すこと」などについて大野 哲也氏よりお話しいただき、対談を通じて学びました。
ポイント
1.「夢づくり、街づくり」で社会貢献を目指す大野建設の歴史
2.社員・大工育成といった「人づくり」に力を入れる大野建設の取り組みとは
3.「不易流行」~変わらない使命と変える挑戦で、新しい時を切り開く~
1.「夢づくり、街づくり」で社会貢献を目指す大野建設の歴史
1907年(明治40年)に大野福次郎氏が、大工・建築業として大野組を創業したのが、大野建設の始まりです。
創業者の大野福次郎氏は、大変腕の立つ大工職人で、地域の人から評判であった反面、仕事・弟子にはとても厳しい人だったそうです。
その後、大野福次郎氏の弟子であった大野島蔵氏が、大野建設の2代目代表として就任されます。
1963年に有限会社大野建設へ組織化した後、1966年には有限会社大野建設から、大野建設株式会社へと改組しました。
1970年には子会社「有限会社大野不動産」を設立し、街づくりへの貢献を幅広く目指します。
創業85周年を迎えた1992年に、大野 哲也氏の父親である大野 年司氏が3代目に就任。その際に、現在も引き継がれている経営理念「三方よし」を策定します。
そして、2021年に大野 哲也氏が代表取締役社長に就任されたのです。
大野建設株式会社には、創業の精神として創業者・大野福次郎氏の言葉が今も引き継がれています。
「家づくりは、細くても永く行え 家づくりは、地域をよく知るものが行え」。
そしてこの創業の精神は、大野建設株式会社入口にある大野福次郎氏の胸像に記されており、大野哲也氏にとって忘れてはならない言葉となっています。
そして創業者の大野福次郎氏は「金儲けのためにやってるんじゃねえ。人に喜ばれる(役に立つ)ためにやってるんだ。だからいい仕事をするんだ(自分を磨くんだ)。」が口癖だったそうです。
大野建設株式会社は、地域の建物づくりに責任を持って取り組むために、代々棟梁社員育成の必要性を重要視しています。
なぜなら、「夢づくり、街づくり」で社会貢献を目指すための根底部分には、技術を含めた人づくりが重要だと考えられるからと、大野氏はおっしゃられていました。
大野建設株式会社は、現在の経営理念として『三方良しの理念をもって、「夢づくり、街づくり」で社会に貢献しよう』を掲げています。
三方は「お客様」「大野建設」「地域社会」を指します。大野建設株式会社のシンボルマークには、それら三方を表す3本のラインが描かれています。
2. 社員・大工育成といった「人づくり」に力を入れる大野建設の取り組みとは
大野建設は、「住宅部門」「大型建設部門」「リフォーム部門」の3つの部門があり、ガラス1枚から大型ビルまで、地域の建築であれば何でも対応可能です。
また、大野建設の特徴として、受注の60%が紹介・リピート率が60%と高く、地域の中で、密着した関係性を築くことでお客様との長い付き合いができています。
地域に密着して、これからもお客様と長い付き合いをしていくために、人材育成を非常に大切にされているそうです。
人材育成の一環として朝の清掃活動や、人間学を学ぶ社員研修を行っています。
月刊誌である「致知」を教材として、月に1度の頻度で人間学を学ぶ社員研修を行い、この研修には、社員・大工の方が参加しています。
また、大工を含めたスタッフ皆が成長できるように、「未来づくりプロジェクト」という自立・自走組織の研修も実施。
その他にも、大野建設では社員・大工の育成を目的とた活動・研修を多数企画しているのです。
大野建設は特に大工育成に力を入れており、これは被災といった有事の際でも豊かな街や暮らしをつくる企業であるためです。
そのため、大野建設では、平時に被災を想定した応急仮設住宅の建設訓練や、停電時でも対応できるように機械を使用しない建築作業を実施しています。
その他にも、社員大工の安定とやりがいを提供するために、待遇は一般社員と基本的に同じにしています。
様々な大工に関する育成制度が評価され、1998年に建設大臣顕彰、勤続51年の社員大工が国土交通大臣顕彰(建設マイスター)を受賞しました。
このように、大野建設は地域の人のみならず、行政からも高く評価されています。
3 .「不易流行」~変わらない使命と変える挑戦で、新しい時を切り開く~
大野建設は長い歴史の中で多くの挑戦をしてきました。
そんな大野建設の「変わらないこと」「少し変わること」「今後のビジョン」について紹介をします。
大野建設の「変わらないこと」は、下記の5つが挙げられます。
1.創業の精神(大工棟梁魂)
2.「三方良し」の理念と行動
3.「夢づくり、街づくり」で社会に貢献すること
4.「成長(拡大)と安定」2つ同時に推し進めること
5.「安全・健康第一」
大野建設の原点の考え方である、「相手の役に立つこと、人に役に立つ人を育てること」は今後も変わらず、大事にしていくとのことでした。
大野建設の「少し変わること」は、下記の3つが挙げられます。
1.社長のスタイルを「近き者悦べば遠き者来たらん」から「先義後利」に
2.「ファーストコールカンパニー」を目指す
3.「年輪経営」を目指す
地域、お客様そして社員に寄り添い、長く愛される会社を目指していくとのことでした。
大野建設の「変えること」は、下記の2つが挙げられます。
1.真の「働き方改革」=生産性の向上
2.社内・社外の情報発信の強化
年輪経営を目指すために、これら2つの強化を図っていくとのことでした。
これからも、三方良しの理念を持って、人(建築技術者・技能者)を育て、地域の皆様にお役立ちをお届けし、社会に貢献していく企業を目指していくと熱く語られていました。
第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)
質疑応答では、「お客様から家づくりを注文された際、完成までの流れ・そして大切にしていることは何か」という質問があり、「お客様が安心して家づくりを頼めるように、工程フロー明確化を心がけている。それは、建築だけでなく、大工の建築への想いや、大野建設の価値観の共有なども行っている」と大野氏よりご回答いただきました。
また、後藤代表理事より「経営をしていく上で影響を受けた人物は誰ですか」という質問に対して、「近い所であれば、経営者として祖父と父の影響が大きかった。会社経営に関しては、孫正義さんの影響を受けている。若い時に、孫正義さんに関するIT企業で働いていたからだ。」とご回答いただきました。
最後に後藤代表理事より「それぞれの社員・大工の方々が自分は何をしたいなどを、話される機会を設けていることが大変素晴らしい。そして、ご両親に会社経営を強制されなかったからこそ、大野氏は自ら家督を継ぎたいと考えるようになった。ぜひ今後家督を継ぐ事例として、紹介をさせていただきたい」と総括をいただき、今回の研究会は終了いたしました。
次回は6月28日に、銀座萬年堂本店 13代目 である樋口喜之 氏にご登壇いただきます。