活動報告

【第48回100年経営研究会】下請け会社から老舗ベンチャーへの変革(登壇者:1907年創業/側島製罐株式会社)

2022年8月28日

2022年7月19日(火)、第48回100年経営研究会を開催いたしました。

今回の研究会では、1907年に創業された側島製罐株式会社の6代目就任予定である石川 貴也氏をお迎えし、「側島製罐の歴史」「新たな取り組み」「老舗ベンチャーへの変革」などについてお話しいただきました。

また、100年経営研究機構からは当機構顧問で静岡県立大学教授の落合康裕先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。



登壇者の紹介

今回の登壇者である石川氏の経歴からご紹介いたします。


<登壇者プロフィール>
側島製罐株式会社 6代目(予定)
石川 貴也(いしかわ たかや) 氏


愛知県名古屋市出身 35歳。
慶應義塾大学経済学部卒業後、日本政策金融公庫へ入社。浜松支店、千葉支店を経て本店へ。その後、内閣官房へ出向して地方創生の政策を担当、2020年4月に家業の側島製罐(株)に入社。現在は平社員だが実質的な事業責任者として執行中。
側島製罐は創業して117年目を迎えるが、2020年までは20年連続売上減少、年商は1/3まで落ち込み、直近10期でも7期が赤字という苦境であった。理念や社是もなく空中分解していた会社で立て直しを行い、ミッション=”世界にcanを”、Vision=”宝物を託される人になろう”と定め、下請け会社から老舗ベンチャーへの変革を進めている。



第1部:トークセッション(側島製罐株式会社 6代目就任予定 石川 貴也(いしかわ たかや)氏 × 落合康裕 顧問)

今回のトークセッションでは、「側島製罐の歴史」「新たな取り組み」「老舗ベンチャーへの変革」などについて石川氏よりお話しいただき、対談を通じて学びました。


ポイント
1.養蚕業から缶の組み立て加工へ。側島製罐のこれまでの歴史とは
2.【新たな取り組み】BtoC向けの新商品開発で業績を改善
3.苦難を乗り越え、下請け会社から老舗ベンチャーに変革



1.養蚕業から缶の組み立て加工へ。側島製罐のこれまでの歴史

側島製罐は2022年で117年目を迎える長寿企業で、お菓子やのりなどを包装する一般缶の組み立て加工をされています。


創業時は養蚕業を営まれていましたが、戦前に愛知陸軍の指定工場になってからは乾パンや航空部品を製造されていました。

その後、戦後から缶の容器を製造し始め、乾物のための包装容器からテーマパーク向け・洋菓子店向け・イベント企画品向けの缶の製造へとシフトしながら、包装資材としての缶づくりを50年以上行われています。


戦後から2000年にかけては、お中元・お歳暮などの文化が現在よりも盛んであったこともあり、1990年時点では1年で10億以上を売り上げ、約100人もの従業員が働かれていました。

しかし、現在は製罐業全体としても衰退しつつあり、側島製罐も2020年までは20年連続で売り上げ減少という苦境にあります。


こうした歴史の中で、石川氏は大学卒業後に日本政策金融公庫に就職され、その後2020年から家業に戻られて会社の立て直しを進められています。



2.【新たな取り組み】BtoC向けの新商品開発で業績を改善

業界が衰退していく中で家業に戻られた石川氏は、会社の立て直しを図ります。


これまでは下請けで缶を製造していたため、卸値がある程度決まっていたことに着目しました。

業績改善に向け、下請けではなく自社商品としてBtoCで販売できる新商品の開発に取り組まれたのです。

推し活をしている方たちをターゲットに、元々製造されていたカラフルな缶をアニメキャラクターのカラーと掛け合わせて販売したり、フィンランド人のデザイナーとともに「そっと」という新商品を作り、へその緒・おしゃぶり・お手紙・お守りなど、お子様が小さいときの想い出となる物を保管できる商品を作ったりして、新たに販売を開始されました。


同時に、SNSを活用しながら広報活動を増やしたことで、これまではテレビや新聞などのメディアにほとんど露出する機会がなかったのが、テレビ出演なども増加していきました。


その結果、2020年まで20年連続で続いていた売上減少が、2021年には前年の売上を上回り、利益も大幅に改善されています。

また、BtoCの商品を販売したことに加えSNSを通じて広報活動を行ったことで、ユーザーの方から「こういう使い方をしています」「こんな缶があったら嬉しいです」などの感想やコメントが寄せられ、業績改善と同時に従業員の方のモチベーションアップにも繋げられています。



3.苦難を乗り越え、下請け会社から老舗ベンチャーに変革

新商品の発売と積極的な広報活動により売上も利益も改善されてきている側島製罐ですが、道のりは険しかったと石川氏は言います。


家業に戻った直後は「会社のためを思って色々やっているんだから、みんなも付いてきてくれるだろう」といった考えで社内体制の改革に取り組まれていましたが、これまで積み上げられてきた100年以上の家業の慣習を無視して新しいことを進めようとしてしまったこともあり、一時は従業員の方から不満の声がありました。

以前は社是や理念などもなく空中分解しているような状態で、それぞれの部署がいがみ合っていました。


そのような状況で最初に取り組んだのは社内改革でした。

30人規模の会社であったことから全員が一枚岩になってやらないと進むものも進まないと感じた石川氏は、まず「全員が目線を合わせて大義を掲げてやっていこう」という想いで、理念の作成を進めます。

他の会社はトップダウンで理念を決めていくことが多いですが、側島製罐の場合は全員の目線を合わせるために、プロジェクトチームを組んでお互いに意見を出し合いながら納得のいく形で理念を作成していきました。


社内改革を進めていく中で工場長の退職といった大きな出来事がありながらも、前職で培った折衝能力を活かしながら社員一人ひとりと話す時間を取ったことで、全員がオーナーシップを持って生き生きと働くことができ、その結果売上や利益の改善にも繋げられています。


今後については、「全員が自立して、オーナー一族だけでなく誰が社長になっても回せるような組織を目指しながら、家業を変革していきたい」とお話しいただきました。

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第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)

最後に落合顧問より「みんなが避けるようなことに向き合いながら、これだけ新しい取り組みをしているのが印象に残った。また今後のご活躍も期待しています。ありがとうございました」と総括をいただき、今回の研究会は終了いたしました。


次回は7月26日(火)に、の常磐津三味線奏者の5代目である常磐津 文字兵衛(ときわづ もじべえ)氏にご登壇いただきます。