第15回研究会「100年経営を“家の存続戦略”から考える」
2018年8月21日

時代とともに変化する「家」の考え方
米村先生は、“家族社会学”を専門としており、「家」についての専門書も複数執筆されています。また、「家」の研究を始めた当初は「家訓・家憲」をテーマに研究活動に取り組んでいたということで、今回は「家族論」「家訓・家憲」という実務とは異なる視点から「100年経営」についてお話をお話いただきました。 米村先生は冒頭、日本において「家」という考え方は、戦前と戦後で大きく変化している、と説明しました。例えば、戦前であれば「国家」「共同体」と同じレベルで「家」が存在し、ひとつのイデオロギーが形成されていました。しかし、現代の若者に対して「家とは何か」という話をしてもポカンとしている学生が多く、各個人に対する「家」の影響力は時代とともにだんだんと弱まっていることを実感しているとのことです。「家訓・家憲」から読み解く、「家」存続の工夫
しかし、「家」の持つ影響力が弱まった現代においても「家」は存続しています。「家の存続」とは家名・家産・家業が世代を超えて存続していくことであり、100年超企業のファミリービジネスなどはこれに該当します。 そして、それぞれの「家」を読み解くための鍵となるのが「家訓・家憲」です。「家訓・家憲」から、それぞれの「家」が家を存続させるために何を考え、何を実行してきたのかを知る事ができます。 例えば、続けていくことを重視し、息子ができなければ娘婿を“養子”として継いでいくことを記しているもの、長子相続制を基本としながらも、家長があまりにも「家」を害する存在である場合は、その座を降ろすべしと明記されているものもあります。内容は「家」によって異なりますが、作成者(当時の家長)の危機意識、または理想が強く反映されている場合が多いようです。 「家訓・家憲」とは家族全員の意図を反映しているわけではないため、厳密な意味での生きた規範ではなく、「家」にとっての心得や指針のような意味合いが強い、と米村先生は説明しました。
今後の課題は、「家」の存続を新しい価値観で見出していくこと
ただし、戦前は「家」=「家業」という考えが強く、生活のために続けていかなければならないものでしたが、現代は“続けていかなくても良いもの”に考え方が変わりつつあるため、家業経営体のメンバーが「家」の存続をどれほど重要なものとして共有できているのかが課題である。と現代の「家」の脆弱性を伝えました。 更には、戦前は「家」の決まりに沿って生きていくしかなかった時代。他に選択肢などありませんでした。しかし、現代社会には選択肢がたくさんあります。そのような時代において「家を存続していく」ことを新しい価値観で見出していかなければ今後の「家の存続」は難しいと米村先生はまとめました。 講義の後は、参加者と共に「家訓・家憲」と「経営理念」の違いや、「家」の遺産は後継者へ相続するべきであるかについて議論をしました。