活動報告

【第3回オンライン研究会】お客様第一主義=社員第一主義。徹底的な理念教育が社員の自立と一体感を高める(登壇者:1895年創業/株式会社人形町今半)

2020年9月22日

2020年9月9日(水)、第3回オンライン研究会を開催しました。
今回の研究会では、1895年創業で、人形町にてすき焼き、しゃぶしゃぶなどの飲食店を運営する株式会社人形町今半の代表取締役副社長の高岡哲郎氏をお迎えし、コロナ禍で大影響が出た飲食店において株式会社人形町今半がどのような対応をとったのかなどについてお話しいただきました。
また、100年経営研究機構からは当機構代表理事で日本経済大学大学院特任教授の後藤俊夫先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。


登壇者の紹介

今回の登壇者である高岡副社長の経歴からご紹介いたします。
<登壇者プロフィール>
株式会社人形町今半
代表取締役副社長
高岡哲郎
1961年東京生まれ。株式会社人形町今半取締役副社長。玉川大学文学部児童専修卒業後、1985年株式会社人形町今半に入社。観光旅館日光東観荘、米国コーネル大学PDPプログラムへの留学、人形町今半飲食店新店店長、本店店長、副社長兼飲食部総支配人、副社長兼経営企画室室長・本部長を経て現職。

第1部:トークセッション(株式会社人形町今半代表取締役副社長 高岡哲郎氏 × 後藤俊夫 代表理事)

今回のトークセッションでは、株式会社人形町今半の歴史を振り返りながら、「経営理念と理念教育」、「新型コロナウイルスの影響への対応」、「今後の展望」などについて高岡副社長よりお話しいただき、対談を通じて学びました。

ポイント
1.お客様第一主義を徹底した経営理念で、ハレの日に付加価値を提供
2.【理念教育はなぜ必要か?】お客様第一主義は社員第一主義。経営理念が社員の背中を押す
3. “ワンイマハン” コロナインパクトが社員の多様性を育み、柔軟な組織へと組み替える

1.お客様第一主義を徹底した経営理念で、ハレの日に付加価値を提供

人形町今半の経営理念で大きな特徴となるのが、”お客様第一主義”が徹底されている点です。
お客様第一主義が徹底されているのには、経営理念をテキスト化した先代の「人間は何もしないと自分第一主義になる」という考えが現れています。
もともと牛鍋屋であった人形町今半は付加価値を向上させるためにすき焼き屋へと移り変わったのち、お客様からの要望に答える形で惣菜店やお弁当のお届け、家庭用タレの販売などの事業も始めてきました。
また、お客様と一生涯に渡ってお付き合いをしたいという思いから、特にハレのシーンを支えることを大切にしておられます。
そのため、人形町今半ではドリンクアドバイザーやクリーン委員会などの設置、予算達成店表彰や桂むきコンテストなど、その他にも多くのハレのシーンに付加価値を提供するための取り組みがなされています。
ハレのシーンにおける付加価値は手間とも考えられますが、その手間を磨き上げるのが人形町今半のブランドであり、手間の磨き上げを実践する社員に会社として投資をするのが最もお客様のハレのシーンを支え、お客様第一に繋がると考えられています。

2.理念教育はなぜ必要か?お客様第一主義は社員第一主義。経営理念が社員の背中を押す

人形町今半の入社式では、まず全員が人形町今半の歴史やポリシー、こころについて知ることから始められます。
会社で一番多くの決断をするのはフロントラインに立つ従業員であり、人形町今半の経営理念であるお客様第一主義を実現するためにはまず社員第一主義でなければいけないという理由で理念教育から始められています。
また、お客様第一主義という経営理念を社員全員が意識するためにも「人形町今半のこころ」という経営理念が書かれた冊子を全員が携帯し、
・「チームのベクトルを合わせる」
・「踏み出す経験をDNA化」
・「理念を誰もが語り継げる」
という目標を目指して実践されています。

そして、今年、トップチームによって作成された経営計画書も「会社の規模よりワクワクする仕事」「自主自立のチーム創り」などを目標に作成され、「社内意識調査を経営のインジケーターにする」「時間資産の価値向上を現場KPIとする」という指標が設けられるなど、まさに社員第一主義・お客様第一主義が会社全体に浸透していることが感じられます。
理念が全社員に浸透し、全員が人形町今半のこころを意識できているからこそ、コロナ禍においても様々な取り組みが生み出されました。
・自前でマスクを作って、お得意様に配布
・精肉の即日お届けサービス
・他の料理屋さんや生産者さんと協力して医療従事者に1万色を供給
・飲食店客員の精肉行列代行お並びサービス
徹底的に理念教育が行われているからこそ、社員が自立し、それぞれが同じ目標に向かって踏み出すことができると考えられます。

3. “ワンイマハン” コロナインパクトが多様性を育み、柔軟な組織へと組み替える

人形町今半のこれからについて、「セクショナリズムから脱却し、柔軟な組織へと組み替える必要がある」と高岡副社長は話されていました。
今回のコロナインパクトによって飲食店やケータリングサービスの売上が例年より落ち込み、高岡副社長が今まで経験したことのないような大打撃を受けました。
コロナのように長寿経営の中で訪れる社会問題に対応していくためには、偏った経営ではなくフラットな経営である必要があります。
そのため、人形町今半はフラットな経営にするためにも今回のコロナインパクトを機に以下のような取り組みをされています。

・人形町今半パスポート
マインドやスキルアップに繋がるレッスンを開講。月に1回を約2年間、3時間×17回のレッスンを各店長が受講する。
・店舗や部門を超えた交流研修や交流飲み会を実施
飲食部門のトレーニングに各部門が参加。精肉店店長と飲食店調理長の飲み会から牛肉管理を撤廃し、全社原価1.5%削減を実現。
・楽しも会議
全43チームで毎月開催し、各店舗で年間経営計画や予算立案を作成。事業所帳がファシリテートして問題解決し、個人のビジョンを徹底的に応援。

マインドやスキルアップ研修によって会社全体の共感力、多様性の受容、教養を育み、店舗や部門を超えた交流によってどの社員がどの部門に異動しても平常通り運営していくことができるフラットな状態を目指されています。
また、「アセスメントし準備を怠らない。その次の期で止血を完了し、柔軟な組織に組み替えていく。アンサンブルからジャムセッションへ」と、次の100年に向けた目標についてもお話しいただきました。


第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)


参加者からの下記のような質問に対して、高岡副社長より説明をいただきました。
入社式で社員がまず人形町今半の歴史について学ぶことについて、「社員からは一番面白いという意見もあり、全員が歴史を拝見することで自分が売る商品はこれまでどのように変容してきて、今の姿になっているのかということがわかる。それが自身や誇り、そして愛着となり、お客様に語りたくなる。」といった社員の感想とともに、社史について学ぶことの効果をお話しいただきました。

会員発表では、当機構監事でワイズパートナーズ税理士法人代表社員の小西氏より、
「入社から人材研修の仕組みがしっかりとされていることによって人形町今半の人材の質が高く、コロナ禍でも様々な取り組みができるのではないか。」
「100経営研究機構の研究会に参加することで”なぜそれを創って売るのか”、”何のためにやっているのか”、”なぜその地域でやるのか”など、企業の存在意義が重要であると感じる。そして、100年企業の経営者の方々は企業の存在意義について考えながら経営をしていくという当たり前のことを当たり前のように実践している。」
と今回の勉強会に対する感想をお話しいただきました。

最後に後藤代表理事より、「人形町今半の企業経営は、他の企業が今すぐ真似しようと思っても真似できないくらい、過去の経験や長年の歴史による重みのあるもの」「BSE問題などの過去の経験から学び、次に向けた種蒔きができている」と総括いただき、今回の研究会は終了いたしました。


次回は9月23日に、1805年創業の<株式会社船橋屋、執行役員件企画本部企画本部長の佐藤恭子氏にご登壇いただきます。