活動報告

【第8回オンライン研究会】外の経験があるからこそ理解できた、嘉永2年から続く山本海苔店の長寿経営の秘訣(登壇者:1849年創業/株式会社山本海苔店)

2020年11月24日

2020年11月11日(水)、第8回オンライン研究会を開催しました。
今回のオンライン研究会では、東京都中央区日本橋にて海苔の販売を行う、株式会社山本海苔店の専務取締役の山本貴大さんをお迎えし、1849年創業からの山本海苔店の歴史と長寿経営の秘訣、コロナ禍にどのような対応をされたのかについてお話しいただきました。
また、100年経営研究機構からは、当機構顧問で静岡県立大学教授の落合康裕先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。

登壇者の紹介

今回の登壇者である山本専務の経歴からご紹介いたします。

<登壇者プロフィール>
株式会社山本海苔店
専務取締役
山本貴大
1983年生まれ。2005年慶應義塾大学法学部を卒業後、2005年から東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に勤務。
2008年に株式会社山本海苔店に転職し、仕入部で山本海苔店人生がはじまる。
翌年より丸梅商貿(上海)有限公司勤務となり、上海環球金融中心におむすび屋「Omusubi Maruume」出店に携わる。
2011年には帰国し、その後もSingapore髙島屋や三越台北駅前店出店など、海外事業に携わる。
2016年、専務取締役営業本部長に就任。
2017年、専務取締役営業本部長兼管理本部長に就任し、現在に至る。

第1部:トークセッション(株式会社山本海苔店の専務取締役 山本貴大 氏 × 落合康裕 顧問)

今回のトークセッションでは、「なぜ100年企業が生まれるのか」をテーマに、「伝統と革新」という二律背反する行いをマネジメントすることがなぜ有効なのか、ということについて山本専務よりお話しいただき、対談を通じて学びました。

ポイント
1.海苔のリーディングカンパニーなら儲けではなく、生産者を一番に大切にする
2.言わない美学を徹底することで、顧客をむやみ無闇に増やさず既存顧客を大事にする
3.地域に育てられたからこそ、税金を払うことで社会に還元する
4.事業継承のリスクを減らす2つのポイント

1.海苔のリーディングカンパニーなら儲けではなく、生産者を一番大切にする

世の中では利益のたくさんある企業こそが「すばらしい偉大な企業」とされることが多いですが、山本専務のお話では異なる部分に焦点が当てられていました。
山本専務が焦点として挙げられたのは、「安く仕入れて喜ぶのではなく、海苔業界を牽引する役割のある企業として、業界の未来を見据えた視点を持ち、SDGs経営をする」ということです。
山本専務は、「今思えばステークホルダーとして最も大事な漁師さんを大切にするSDGs経営が山本海苔店には根付いていた」と仰っていました。

2.言わない美学を徹底することで、顧客をむやみに増やさず既存顧客を大事にする

店舗を構えられている日本橋には「言わない美学」と言われるような「自分から言わないことをよしとする粋な姿勢」の文化が残っています。
自社や製品を自ら褒めたりすることは野暮だとされており、このことが既存の顧客を大事にするという「顧客セグメントの明確化」に繋がります。
つまり、言わない美学が山本海苔店として大事にするお客様を明確化し、そこから企業としての戦略にも反映されています。

3.地域に育てられたからこそ、税金を払うことで社会に還元する

山本専務が銀行にお勤めの時は、節税の提案を企業に行っていたこともあり、税金を払わなくて済むならその方がいいという考えがあったそうです。
ところが長寿企業である山本海苔店では、日本橋という地域で育てられた企業は東京都や中央区に還元するのは当たり前だという意識が強くありました。
利益だけで損得を考えず、地域行事にも協力し、地域に愛される企業として深い繋がりを築くことも長寿経営にとって大事なポイントになります。
山本海苔店の歴史を振り返ると、長寿企業が必ず直面してきた天災などの危機に直面しても、地域に愛される企業だったからこそ周りの人たちに協力してもらいながら立て直しをしてこられたという歴史があります。

4.事業継承のリスクを減らす2つのポイント

1つ目のポイントは、長寿企業として続くために、本家と2つの分家が役割を決めて協力していくというシステムが、山本海苔店の場合は余計な争いを生まずにうまく機能したという点です。 そして2つ目のポイントは、婿養子という新しい風を迎え入れることが結果的に会社を大きくさせることに繋がったという点です。
企業存続にはイノベーションが必要だという前提のもと、
・過去のしがらみは関係ない
・婿養子に対しての社員の同情
・先代がやってきたことを否定しないマネジメント
といった要素が含まれる婿養子の時代に、イノベーションや企業の成長が成されたと考察されておりました。

第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)

最後に落合先生より、「山本専務はキャリアの早い段階でベンチャー企業化の疑似体験をすることでイノベーションが起こる仕掛けが作られ、29歳からは会社の伝統や長期的な目線で必要なことを学ぶということが行われている」と総括いただき、今回の研究会は終了いたしました。


次回は11月25日に、1880年創業の株式会社ちんや、代表取締役の住吉史彦氏にご登壇いただきます。