【第10回オンライン研究会】100年企業の持つ”見えない価値”が企業の永続へと繋がる(登壇者:1728年創業/株式会社茶加藤)
2020年12月22日
今回の研究会では、神奈川県伊勢原市にてお茶の製造販売を行う、株式会社茶加藤の代表取締役の加藤宗兵衛氏(10代目)をお迎えし、株式会社茶加藤の歴史とともに「見えない価値」の重要性や長寿企業が変化の激しい時代に対応するために必要な付加価値、SDGs経営などについてお話しいただきました。
また、100年経営研究機構からは当機構代表理事で日本経済大学大学院特任教授の後藤俊夫先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。
登壇者の紹介
今回の登壇者である加藤社長の経歴からご紹介いたします。<登壇者プロフィール>
株式会社茶加藤
代表取締役社長
加藤宗兵衛(10代目)
1979年生まれ、2002年に慶應義塾大学卒業後にすぐに株式会社茶加藤に入社。2005年、先代逝去により、10代目宗兵衛を襲名し株式会社茶加藤代表取締役に就任。(現在の役職)公益社団法人日本青年会議所副会頭、長江貿易株式会社日本担当副社長、特定非営利法人公共政策調査機構チーフ・パートナーシップ・オフィサー、一般社団法人SDGsマネジメント共同代表。
第1部:トークセッション(株式会社茶加藤 代表取締役 加藤宗兵衛 氏 × 後藤俊夫代表理事)
今回のトークセッションでは、株式会社茶加藤の社史や経営について振り返りながら、「100年企業における見えない資本の価値」「変化の激しい時代に対応していくためには」「これからの企業経営のポイント」などについて加藤社長よりお話しいただき、対談を通じて学びました。ポイント
1.長寿企業だからこそ得られる”見えない資本の価値”とは文化・信用・歴史である
2.永続的に新しい付加価値を生み出すからこそ企業が永続する
3.これからの企業経営のポイントは”共有できる核となる価値観”を探すこと
1. 長寿企業だからこそ得られる”見えない資本の価値”とは文化・信用・歴史である
100年企業においては「長くなればなるほど深くなる文化や歴史」や「長く続いているからこそ得られる信用」が見えない資本の価値となります。しかし、長寿企業だからこそ得られる財産は、上手く情報発信がされているかどうかで価値をもたせられるかどうかが左右されます。
企業の見えない資本の価値を上手く情報発信している企業の例として、1805年から東京都江東区でくず餅を販売している「株式会社船橋屋」は毎日ブログを発信することによって、定員10名の採用に対して1万7000人の新卒のエントリーシートが集まりました。
今回ご登壇いただいた株式会社茶加藤においては、以下のような点を詳しく語ることによって見えない資本に価値を与えれられると後藤代表理事は言います。
・(4代目宗兵衛が仕法を受けた)二宮尊徳について
・福沢諭吉の「帳合之法」による単式簿記を今も使っているということ
・襲名について(なぜ襲名するのか。なぜ襲名が重要なのか。)
・今回のコロナに限らず、これまでの危機をどのように乗り越えてきたのか
長寿企業が当たり前だと思っていることでも一般の人は知らない人が多く、長寿企業が長い歴史の中で手に入れてきた財産なので、情報発信をすることで長寿企業だからこそ得られる文化・信用・歴史に価値がもたらされ、まさに今回のコロナのような危機を乗り越えるためにも重要なものとなります。
2.永続的に新しい付加価値を生み出すからこそ企業が永続する
100年企業ともなると、かつてはアップトレンドであった商品も企業が永続していく中でダウントレンドへと移り変わっていくこともあります。このような移り変わりの激しい時代に対応し、さらなる長寿経営へと繋げるためには、何かを破壊し新しいものを生み出す、つまりイノベーションを起こすことが重要です。
世界で初めてペットボトル入りのお茶を発売した伊藤園の事例のように、業界によってイノベーションの方法は様々ですが、思い切って捨てなければいけないものを破壊して、お客様に驚きを与え続けることでダウントレンドでもチャンスに変えることができます。
企業の永続が社会に価値を生むのではなく、永続的に新しい付加価値を生み出すからこそ企業が永続するのです。
3.これからの企業経営のポイントは”共有できる核となる価値観”を探すこと
貧困層の自立・起業を促すために無担保で少額融資する「グラミン銀行」を設立し、2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスの提唱する「ソーシャルビジネス」のように、近年は社会的な課題をビジネスの手法で解決する人が増えてきました。加藤社長も一般社団法人SDGsマネジメントの共同代表も務めており、経済性と社会性の両立という観点でも日々取り組まれております。
しかし、社会性やSDGsだけを考えていても、利益を生み出し社会に還元しなければ意味がありません。
社会的な課題を解決することを理念に掲げながら、かつ利益を生み出し、企業を永続させていくためには、理念や価値観を共有することが重要になります。
・「お客様と理念が共有できる商品を販売する」
・「自社の理念を共有できる人を採用する」
もし「誰にでも売ろう」「誰にでも買ってもらおう」と考えていると、最終的にはお客様に首根っこを持たれているような商売になり、対等な関係性が崩れ、商売にならなくなってしまいます。 全員が納得してくれる価値観は無いと考え、お客様と共有できる核となる価値観を探すことが企業の永続へと繋がります。
第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)
最後に加藤社長への質疑応答が行われ、若いときに先代を亡くされたご苦心を乗り越えられた理由について、以下のようにお話しいただきました。・「番頭さんが会社にいたので、先代が亡くなった後も支えてくださった。番頭さんが会社にいたことによって、価値観を共有する時間が長く、父との関わりもしっかりと持てていたことが大きかった。」
・「父の勧めで消防団や青年会議所に入っていたので、他企業の先輩方から” 茶加藤とはこういう会社だよ”という見えない価値について教えてもらった。」
また番頭さんの育成に関して、「大企業ならば自社育成でもいいと思うが、中小企業になると他社との連携の中で外部パートナーを探すほうが将来の企業を支えてくれる」とご回答をいただき、今回の研究会は終了いたしました。
次回は12月23日に、1874年創業の株式会社ジャパン・フラワー・コーポレーション、代表取締役社長の松村吉章氏にご登壇いただきます。