活動報告

【松阪商人塾(1日目)/第12回100年経営研究会】宗教に対する価値観の変化。重要な社会的役割を担う佛栄堂の新たな挑戦(登壇者:1906年創業/株式会社佛英堂)

2021年4月30日

2021年1月13日(水)、第12回100年経営研究会を開催いたしました。
松阪商工会議所との共催企画となった今回の研究会では、1906年に三重県松阪市にて花輪製造店として創業し、現在は仏壇・仏具専門店として地域に密着した商売をされている株式会社佛英堂の専務取締役である野呂英旦氏をお迎えし、「会社の歴史、これまでの取り組み、新たな挑戦」についてお話しいただきました。
また、100年経営研究機構からは当機構代表理事で日本経済大学大学院特任教授の後藤俊夫先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。


登壇者の紹介

今回の登壇者である野呂専務の経歴からご紹介いたします。

<登壇者プロフィール>
株式会社佛英堂
専務取締役
野呂英旦
立命館大学文学部心理学科卒業後、インターネット・ビジネス・ジャパン株式会社にてJAF、日本看護協会、早稲田大学など、企業や大学のWEBサイトコンサルティング業に従事。
その後、家業に戻り専務取締役兼IT担当として仏壇・仏具専門店「ぶつえいどう」のネットショップ運用を担当し、実店舗の売上を超える事業に成長。
新規事業として立ち上げた「お寺と地域のマッチングサイト『かすてら』」が松阪市の中小企業ハンズオン支援対象事業者に選定される。
他にも「オンラインでお坊さんに相談できる『オンライン駆け込み寺』」や「好きな期間だけお墓が持てる『偲墓』」などを運営。最近ではそれらの運用経験を活かし、お寺や企業のサイト制作やマーケティング支援も行っている。


第1部:トークセッション(株式会社佛英堂 専務取締役 野呂英旦 氏 × 後藤俊夫 代表理事)

今回のトークセッションでは、「会社の歴史、これまでの取り組み、新たな挑戦」などについて野呂専務よりお話しいただき、対談を通じて学びました。

ポイント
1. 父の英断。批判もあった中で始めたEC販売がコロナの影響を緩和
2. 想いの共有と先を見越した進路・キャリア選択
3. 新たな挑戦で業界全体を改変へ

1.父の英断。批判もあった中、これまでの常識にとらわれず始めたEC販売

佛栄堂は実店舗事業とEC事業の2つを軸に運営しており、そのうちEC事業は新型コロナウイルスの流行によってこれまで以上に需要が伸びています。
EC事業は野呂専務のお父様が地方の人口減少の問題を見通して、2003年から始められたのですが、当初は人の命や葬儀に関わるものを他の商品と同じように扱い、販売することに対して、批判的な意見も多かったそうです。
しかし、今日では和室や仏間のない住居も増えてきており、宗教に対する信仰心が昔よりも希薄になり、消費に対する価値観も大きく変わってきています。
批判を恐れずEC事業を始めた結果、現在では実店舗とEC販売でそれぞれのノウハウを相互に活かしながら、仏壇・仏具業界の需要の変化に対応しています。
過去の常識にとらわれず、先を見据えて新たにEC事業を始めたことで新型コロナウイルスによる危機を緩和し、佛栄堂をさらなる長寿企業へと導いています。

2.職住近接の理想的な環境がスムーズな事業承継へと繋がる

野呂専務は高校生の時に家業を継ぐことを意識し始め、その後は家業を継ぐことを見越して大学・就職先を選択したと言います。
特に就職先を決める際、今後はEC事業が大事だと考えて東京のIT会社に就職し、そこでの経験が佛栄堂のEC事業の発展に繋がっています。
こうした先を見越した進路・キャリア選択には、野呂専務がいつも職住近接の環境で、ご祖父母様やご両親の姿を見て育ってきたからであると考えられます。
そういった背景から家族の中で自然とお互いの想いを共有でき、その想いの共有が先を見越した進路・キャリア選択を促し、そして事業承継へと繋がっています。

3.新たな挑戦で業界全体を改変し、地域を活性化させる

人々と仏教・お寺との距離感はだんだんと開いてきており、仏壇仏具業界は斜陽産業となってきていますが、野呂専務はこういった業界全体の課題を是正するため、新たな挑戦をいくつも進めています。
そのうちの1つが、お寺の遊休スペースを貸し出し、そこで魅力的なイベントを開催することで、空いたスペースを有効活用するお寺とイベントのマッチングサービス『かすてら』です。
『かすてら』をきっかけに実施されたあるイベントでは、ロックバンドの演奏をBGMに力強い書道パフォーマンスが行われ、約70名が参加。その上、参加者の年齢層も2~80歳と幅広い世代が集まり、大いに盛り上がりを見せたイベントとなりました。
『かすてら』以外にも、お坊さんに悩みを相談できる『オンライン駆け込み寺』や、好きな期間だけお墓が持てる『偲墓』などにも挑戦されています。
佛栄堂は自分たちの利益だけでなく業界全体のことを考え、且つお寺を通して地域の活性化を目指すという、地方の長寿企業として重要な役割を担っていることがわかります。


第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)

最後に後藤先生より、「佛栄堂の取り組みは、亡くなった人や亡くなった人を身内にもつ人の悩み・心の痛みにどのように寄り添っていくかという、重要な社会的役割を担っている。どのように情報発信していくのかにも期待している。」と総括いただき、今回の研究会は終了いたしました。


次回は1月27日に、1575年創業の株式会社柳屋奉善、営業部長の岡一世氏にご登壇いただきます。