【松阪商人塾(2日目)/第13回100年経営研究会】「老伴(おいのとも)」を中心とした伝統と革新で”最中を世界へ”に挑戦(登壇者:1575年創業/株式会社柳屋奉善)
2021年4月30日
前回に引き続き、松阪商工会議所との共催企画となった今回の研究会では、1575年に創業し、三重県松阪市で和菓子の製造販売をしている株式会社柳屋奉善の営業部長である岡一世氏をお迎えし、「会社の歴史、企業理念、これまでの取り組み、新たな挑戦」についてお話しいただきました。
また、100年経営研究機構からは当機構代表理事で日本経済大学大学院特任教授の後藤俊夫先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。
登壇者の紹介
今回の登壇者である野呂専務の経歴からご紹介いたします。<登壇者プロフィール>
株式会社柳屋奉善
営業部長
岡一世(18代目)
1980年2月18日生まれ。幼少期は祖父である16代目の趣味が高じた「ライオン等の飼育」に影響を受け、自身もキジや烏骨鶏の飼育に挑戦。その後、鳥の絵を書くことが好きになり、中学校から高等学校は美術部に入部し、そのまま関西の芸術大学で4年間デザインを学ぶ。 その後、家業の和菓子製造部に入り、5年ほど製造に携わる。また、その間に月に一度は、和菓子業界の重鎮の指導を受けるために東京に通い、技術研鑽に励む。
現在は地元松阪の伝統銘菓であり、自社の看板菓子でもある「老伴(おいのとも)」を世界中の方々の認知を広げるために、「老伴(おいのとも)の最中」をアレンジした、バリエーション豊かな事業展開に取り組んでいる。
第1部:トークセッション(株式会社柳屋奉善 営業部長 岡一世 氏 × 後藤俊夫 代表理事)
今回のトークセッションでは、「会社の歴史、企業理念、これまでの取り組み、新たな挑戦」などについて岡営業部長よりお話しいただき、対談を通じて学びました。。ポイント
1. 祖父や母の影響を受けて身につけた芸術的センスで最中の魅力を発信
2. 長寿企業だからこそ持っている歴史・文化をいかに情報発信していくかが重要
3. 最中を世界へ。老伴を軸とした伝統と革新で海外へ挑戦
1.祖父や母の影響を受けて身につけた芸術的センスで最中の魅力を発信
岡営業部長は中学・高校で美術部に所属、大学ではビジュアルデザインを専攻しており、学生時代に身につけた芸術的センスは、入社後の取り組みにも活かされていると感じられます。・全国名産菓子工業共同組合の青年部に所属し、年に一度、百貨店にて新作商品の発表
・2018年のTVチャンピオン和スイーツ王選手権に出場し、老伴をカフェバージョンにアレンジ
・四季折々の季節を表現したデザインの『老伴百景』
・大学で学んだ知識を活かして、和菓子のパッケージを製作
老伴のアレンジやデザインなどから感じられる芸術的センスは、様々な動物を飼っていた祖父や、松坂なでしことして活動し生け花や茶道も習っていた母の影響が大きいと岡営業部長は言います。
そして祖父や母の影響を受けて身につけた芸術的センスで、松坂の伝統銘菓かつ柳屋奉善の看板菓子である「老伴」をアレンジして、最中の魅力を全国に発信しています。
2.長寿企業だからこそ持っている歴史・文化。いかに情報発信していくかが重要
柳屋奉善は『謙受益』を企業理念としており、「謙虚であれば、利益を受ける」ということを表しています。 しかし、謙虚である一方で、まだまだ情報発信がなされていない部分が多い点が課題となっています。 ・老伴は紅麹で染めて、太陽を表している ・祖父が飼っていたライオンの話 ・鈴最中と本居宣長のつながり 柳屋奉善には地元松阪でもなかなか周知されていない、歴史的価値や驚きのあるストーリーがたくさんあります。 これらが社外発信されることで松坂全体の知名度を高めることにもなるため、長寿企業だからこそ持っている歴史や文化を日々積み重ねて発信していくことが重要となります。3.最中を世界へ。老伴を軸とした伝統と革新で海外へ挑戦
柳屋奉善は元祖『老伴』を軸に、最中を世界中で認知してもらうために挑戦を続けています。そのため、新型コロナウイルスの影響を受ける状況下でも、最中を日本そして世界に広めるために、最中が楽しめるイベント「おうちもなかコンテスト」などを開催しております。
老伴の最中は小麦粉を使用していないグルテンフリーの商品であるため、グルテンフリーをアピールポイントとしてアレルギーの方々、さらには世界中へ老伴の魅力を発信していくことが可能です。
同時に、老伴の起源ともなっている最中の文様もアピールポイントの1つとすることで、柳屋奉善の歴史や伝統も認知してもらいながら、「最中を世界へ」に挑戦していきたいとお話しいただきました。
第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)
最後に後藤先生より、「中国の台頭はすごく、日本は中国に押されているが、中国が日本に対して羨ましいと感じるのは歴史。柳屋奉善は素晴らしい歴史や品物があり、かつ社会全体のことを考えている。CSR、SDGsなど言われているが、それらを実行しているのは長寿企業が象徴しているような商人。柳屋奉善の世界への挑戦で、近江商人のように松阪商人が世界で有名になるきっかけになっていってほしい」と総括いただき、今回の研究会は終了いたしました。次回は2月10日に、1830年創業の株式会社綿善、若おかみの小野雅世氏にご登壇いただきます。