【第20回100年経営研究会】魅力ある街を次世代へ繋ぐ。品川を起点に東海道宿場町を活性化へ(登壇者:1800年創業/株式会社平野屋堀江商店)
2021年6月10日
今回の研究会では、1800年に創業された平野屋堀江商店の代表取締役社長を務める堀江新三氏をお迎えし、「平野屋堀江商店の歴史やまちづくり協議会の会長として取り組まれている地域貢献、東海道の各宿場における街おこし」などについてお話しいただきました。
また、100年経営研究機構からは当機構代表理事で日本経済大学大学院特任教授の後藤俊夫先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。
登壇者の紹介
今回の登壇者である堀江社長の経歴からご紹介いたします。<登壇者プロフィール>
株式会社平野屋堀江商店
代表取締役社長
堀江 新三
旧東海道品川宿周辺まちづくり協議会会長。NPO歴史の道東海道宿駅会議副理事長(次期理事長)、品川地区連合町会会長、諏訪町会会長、東京商工会議所品川支部副会長。
江戸時代に創業した家業を継ぎ、スーパーマーケットを経営。青物横丁の旧東海道沿いに位置し、常ににぎわいの中心として長年にわたり地域から親しまれていたが、平成30(2018)年に惜しまれつつも閉店。
現在は、より一層地域貢献活動に力を入れ、旧東海道の石畳舗装や電線類地中化などを実施。建築物の外観、看板、のれんなどの景観の整備を行うなど、「東海道品川宿」のまちの歴史と伝統を、未来へとつないでいる。
第1部:トークセッション(株式会社平野屋堀江商店 代表取締役 堀江新三 氏 × 後藤俊夫 代表理事)
今回のトークセッションでは、「平野屋堀江商店のこれまでの歴史や現在の取り組み」などについて堀江社長よりお話しいただき、対談を通じて学びました。ポイント
1. 地域に惜しまれつつも代々受け継いできた家業を閉業
2. 東海道と宿場をキーワードに品川を盛り上げ、次の世代につなぐ
1. 地域に惜しまれつつも代々受け継いできた家業を閉業
1800年創業とされている平野屋堀江商店ですが、地域の歴史を調べている中で実際には江戸時代よりも前、天正元年に創業していた可能性があるともされています。 実際は400年以上前から品川の地で商売をしてきた可能性のある平野屋堀江商店ですが、明治時代からは酒類の問屋と小売業を、戦中からは小売業に絞って営業してきたことがわかっています。 そして、戦後からも順調に利益を上げていきながら、堀江社長は21代目として30歳の時に家業を継ぐことになります。堀江社長が継いで以降はスーパーマーケットとして小売業を継続し、お客様に気づいてもらえるよう、よりスーパーマーケットらしい外観にするために建物の建て替えを行います。そして周辺にマンションが建ち始めたこともあって、1年目から利益を出すことに成功します。
しかしその後、相続対策として不動産や株を運用し始めますが上手くいかず、借金が溜まっていくことになるのです。
また、同時期に周辺にイオンやオーケーストアが出店し始めたことがきっかけで、家業の利益も落ち込み、その結果、資金繰りが困難となりご子息に相談することに。
当機構の参与も務めていただいているご子息ですが、当時の状況については「決算書を見ると瀕死だとわかるぐらい厳しい状態だった。そのため父にどうしたいか優先順位をつけてもらい、①屋号を残したい、②先祖から継いできた土地を残したい、③商売を続けたい、という回答が出てきたため、商売は辞めて屋号と土地を残すためにテナントを借りてくれそうな企業を探すことになった」とお話しいただきました。
そうして、地域の方に惜しまれつつも2018年にスーパーマーケットを閉業し、現在はドラッグストアにテナントを貸しながら、代々受け継がれてきた屋号と土地を守られています。
2. 東海道と宿場をキーワードに品川を盛り上げ、次の世代につなぐ
スーパーマーケットを閉店した後、堀江社長は東海道第一宿である品川の発展に貢献されています。そのきっかけとしては、滋賀県の土山宿を訪れた際、その地域の若い人たちが東海道と宿場をキーワードに、東海道を歩いてシンポジウムを開催しているのを知ったことにあります。そこから自分たちも東海道五十三次の第一宿というのをキーワードに街おこしをしようと考えられ、現在まで30年以上品川の街おこしに取り組まれています。
その取り組み内容としては、スイスのジュネーブで発見された梵鐘が品川寺に返還されたのをきっかけに、釣り鐘のレプリカをスイスに送るイベントの実行委員長として運営をリードしながら街全体で企画を行ったり(当日、台風により中止)、旧東海道品川宿周辺まちづくり協議会会長として街づくりの中期計画書を作成し、旧東海道の石畳舗装や電線類地中化などを遂行されたりしています。
また、東海道宿場町全体を盛り上げるために、今年で33回目となる東海道シンポジウムの実施にも貢献されています。
東海道シンポジウムでは年に1回、地元の人達に地域の歴史などに興味を持ってもらい、シンポジウムをきっかけに街おこしが広がることを目指して、街の歴史学んだり街おこしをしている人とのディスカッションが行われたりします。
こうした地域への貢献は堀江社長にとって大事な活動となっており、今後も継続して行っていきたいとお話しいただきました。
第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)
最後に、参加者の株式会社ジャパンフラワーコーポレーションの松村社長から「東海道商勢圏が品川を起点にさらに大発展するような継承の仕方もあるのではないかと感じた。日本遺産や東海道にはビジョナリーなロマンを感じる」とご感想をいただき、今回の研究会は終了いたしました。最後に後藤先生より、「今回は100年という節目を迎える企業が、今後の100年を見据えて200年企業になるためにどういうことを取り組んでいるのかという点を具体的に知れてよかった。今後とも頑張ってほしい」と総括いただき、今回の研究会は終了いたしました。
次回は5月25日に、1865年創業の中西印刷株式会社の代表取締役社長である中西秀彦氏にご登壇いただきます。