活動報告

【第35回100年経営研究会】情報発信で大事なこととは。100年企業7社が語る”これまで”と”これから”について(登壇者:100年企業 7社)

2021年12月28日

2021年12月21日(火)、第35回100年経営研究会を開催いたしました。

2021年は製造業や旅館・宿泊業、酒造業など様々な分野で長寿経営を実現されている100年企業から、計26名の皆様にご登壇いただきました。
今回の研究会では2021年にご登壇いただいた100年企業の中から7名の方々にご登壇いただき、その後の進捗や今年の振り返り、来年の計画などについてお話しいただきました。
また、100年経営研究機構からは当機構代表理事で日本経済大学大学院特任教授の後藤俊夫先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。

 

 

登壇者の紹介

まずは今回の登壇者についてご紹介いたします。

 

<登壇者プロフィール>
第16回研究会講師:有限会社丁子屋 取締役社長 柴山 広行 氏
第17回研究会講師:株式会社有馬芳香堂 事業開発部部長 有馬 康人 氏
第21回研究会講師:中西印刷株式会社 代表取締役社長 中西 秀彦 氏
第22回研究会講師:株式会社古まん 代表取締役社長 日生下 民夫 氏
第26回研究会講師:丸三ハシモト株式会社 代表取締役社長 橋本 英宗 氏
第27回研究会講師:株式会社南部美人 代表取締役社長 久慈 浩介 氏
第30回研究会講師:東酒造株式会社 常務取締役 福元 文雄 氏

 

 

第1部:トークセッション(2021年に登壇した100年企業 7社 × 後藤俊夫 代表理事)

今回のトークセッションでは、2021年にご登壇いただいた100年企業7社の、その後の進捗や今年の振り返り、来年の計画などについてお話しいただき、対談を通じて学びました。

 

ポイント
1. 【丁子屋/有馬芳香堂/中西印刷】「登壇後の進捗」と「これから」について
2.【古まん/丸三ハシモト/南部美人/東酒造】「登壇後の進捗」と「これから」について
3. 多くの100年企業が抱える課題。「情報発信」で重要なこととは

 

 

1. 【丁子屋/有馬芳香堂/中西印刷】「登壇後の進捗」と「これから」について

【有限会社丁子屋(1596年創業) 取締役社長 柴山広行 氏】
丁子屋では今年「組織化」が進められており、従業員がそれぞれの基準で業務にあたっていたこれまでの状態から会社を組織へと変化させるために、スタッフとの対話に重点を置いて評価制度や給与体系の見直し・業務の標準化・社内ルールの作成が行われています。

こうした組織化の取り組みと同時に、コロナで店舗に来られない方向けに2021年1月頃から『冷凍とろろ汁』の販売も開始されています。
『冷凍とろろ汁』は販売が開始されて以降、約1年でお土産品全体に対する売上が3%から7%に上昇しており、静岡県の農林水産物の魅力を生かした加工品コンクール「ふじのくに新商品セレクション」では金賞を受賞するといった実績も残しています。
なお現在では、通販だけでなく静岡県内の百貨店でも『冷凍とろろ汁』が販売されており、好評を集めています。

そして、来年には丁子屋の茅葺屋根が文化庁の登録有形文化財に登録されることが決まっています。

 

【株式会社有馬芳香堂(1921年創業) 事業開発部部長 有馬康人 氏】
今年で100周年を迎えた有馬芳香堂では、100周年事業として『ナッツラボ』という「ナッツ×スイーツ」をコンセプトとしたカフェを兵庫県神戸市に作られています。
4月にオープンして以降、カフェで作った商品が店舗だけでなく神戸大丸や梅田阪急などの百貨店の催事でも出展されており、『ナッツラボ』という新たな切り口で新商品の展開をされています。

なお今後については、100周年を機に新たに設置した事業開発部で既存の枠にはまらない新しいルールやマニュアル、評価制度の作成を進めるとのことで、さらなる組織の活性化が期待されます。

また、2021年10月に開催する予定だった100周年の式典に関しては、9月に延期が決定され、2022年3月に開催される予定です。

 

【中西印刷株式会社(1865年創業) 代表取締役社長 中西秀彦 氏】
中西印刷では、コロナ禍によって昨年より売上が減少したものの、コロナ禍以前から電子組版に転換していたことにより利益を大きく増加させることに成功しています。
オンライン書籍に舵を切っていたことが奏功したと話す中西社長ですが、経営をする上で「技術に拘泥しない」ということを大事にされています。
もともと中西印刷は木版から活版、活版から電子組版というように1代の内に2度の革新を経ており、技術にこだわって現在のように事業転換できていなかったとすると、このコロナ禍でもっと大きな打撃を受けていたと考えられます。
しかし、技術に拘泥することなくお客様のニーズに寄り添って意思決定を行ってきたことで、コロナ禍による被害を抑えられただけでなく、80〜100年継続して取引してきたお客様も変わらず関係性を保たれたまま家業を革新することができています。

 

 

2.【古まん/丸三ハシモト/南部美人/東酒造】「登壇後の進捗」と「これから」について

【株式会社古まん(717年創業) 代表取締役社長 日生下民夫 氏】
旅館業を営まれている古まんは、コロナ禍で人の行き来が断絶されたことで一時は完全休館を行うなど、大きな経済打撃を受けました。
しかし、緊急事態宣言が解除された10月以降はお客様の数が回復し始め、12月には県をまたぐ移動が解禁されたことで、さらに客数が回復する見込みとなっています。

また2023年には、JRグループ6社が全国各地の自治体と協働で展開する国内最大級の観光キャンペーン「デスティネーションキャンペーン」が兵庫で開催される予定となっており、来年はそのプレキャンペーンが行われるため、城崎としてもイベントなど様々な情報発信を行っていきたいとお話しいただきました。

 

【丸三ハシモト株式会社(1908年創業) 代表取締役社長 橋本英宗 氏】
三味線やお琴などの絃を製造する丸三ハシモトでは、コロナによって演奏会が軒並み中止されたことで大きな被害を受けました。
しかし、生産量の減少によって空いた時間を商品開発に費やしたことで、もともと中国の伝統楽器の弦も製造されていましたが、今年から新たに韓国市場にも参入され、今後さらに商品数が増える見込みとなっています。
また橋本社長の父で、丸三ハシモトの会長である橋本圭祐氏が『滋賀県文化賞』を受賞するなど新たな実績も重ねられており、さらに年明けには新しい弦を発表する予定となっています。

最後に「海外の市場とともに、国内で自社が弱かった部分を強めていって希望ある年にしていきたい」と来年の抱負についてもお話しいただきました。

 

【株式会社南部美人(1902年創業) 代表取締役社長 久慈浩介 氏】
自粛が謳われ大きな打撃を受けた酒造業界ですが、南部美人ではコロナ禍でクラフトジンクラフトウォッカの販売をスタートしました。
もともとは、医療的ケア児のためにできることがないかと消毒アルコールを製造し始め、そこからスピリッツで作れるクラフトジン・クラフトウォッカを新たに製造し始めたという経緯がありますが、現在はコロナによって2割ほど減った売上もクラフトジン・クラフトウォッカによって回復していると言います。

また、輸出先が世界55カ国に拡大している海外輸出に関しても、コロナ前までは全体の生産量の2割でしたが現在は4割に伸びており、「日本より世界の方が早く消費が復活しているように感じる」とお話しいただきました。

 

【東酒造株式会社(1915年創業) 常務取締役 福元文雄 氏】
芋焼酎をメインに料理酒やリキュールを販売している東酒造では、コロナ禍による被害だけでなく「基腐れ病」という問題も抱えています。
「基腐れ病」はさつまいもに感染する病気の一つで、さつまいもの収穫量が減少するほど被害が大きくなってきており、焼酎メーカー全体にとってはコロナ以上に大きな問題となることが考えられます。

コロナ以外にも危機を抱えている東酒造ですが、その中でも「自社製品のブランド育成」「異業種とのコラボ」「メディア出演」などを行うことで会社の知名度を徐々に高めており、地元を中心に新たなファンを獲得しながら、芋焼酎の人気を高められています。

 

 

3. 多くの100年企業が抱える課題。「情報発信」で重要なこととは

今回の研究会の後半では、対談の中で「情報発信」が大きなテーマとなりました。
ご登壇いただいた7社の100年企業でも様々な形で情報発信が行われています。

 

【有馬芳香堂】
コラボ・社会課題の解決・地域貢献といった切り口でプレスリリースを打ち、テレビ番組にも出演。
【丁子屋】
浮世絵によって”東海道といえば丁子屋”というブランドが高まってきていることもあり、NHKや民放などのテレビ番組に出演。
【南部美人】
NHKや民法、地元メディアなどに出演しており、自社ブログでも情報発信を早くから始めている。


「情報発信」が課題と感じる100年企業が多い中、南部美人の久慈社長はメディアに取り上げてもらうために重要なこととして下記の2つを挙げられました。
1.大義を伝えること
2.メディアの人と個々に連絡を取り合うこと

南部美人は東日本大震災が起きた当時、被災地からYouTubeを通して発信したメッセージが話題となりましたが、このときのメッセージは地域に根ざして100年以上信頼を積み上げてきた南部美人だからこそ「被災地のために」という大義が伝わり、大きな反響があったと久慈社長は言います。
ほとんどの100年企業は長年”地域のために”ということを考えて真面目にやってきたことから大義を持っていると言えますが、それを一般の人にも伝わるようにいかに噛み砕いてメッセージとして伝えられるかが重要となってきます。

次に、大義とともに「メディアに伝える方法」も重要であるとお話しいただきました。
久慈社長がメディアに伝える時に大事にしていることは、メディアの人と個々に連絡を取り合うことです。
最終的にメディアが取り上げるかどうかを判断するのは個人であり、HPに記事を掲載したりプレスリリースを打ったりするだけではその真意が伝わらず、メディアからの反応を得ることができません。
そこでHPやプレスリリースでの発信とともに、マスコミの個人とパイプを作り個々に大義を伝えることで、商品・サービスへの思いや考えというのを直接伝えることができるのです。
その結果、マスコミに共感や関心を感じさせることができます。

こうした情報発信に関する考えを受けて丸三ハシモトの橋本社長は、「邦楽器の業界の人たちは、自分たちの業界の中だけで考えてしまい新しい考えが浮かばない。100年経営研究会などのように他の業界の方々と情報を交換することで新しいアイデアが出てくる。こういった繋がりを大事にすることこそ、企業が長く続いていくために重要だと感じた。」とお話しいただき、今年ご登壇いただいた100年企業7社と後藤先生による対談が終了いたしました。

 

 

第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)

最後に大髙会長より「大義として最近では女性活躍・社会貢献・子どもたちに向けた教育などがあるが、100年の経営の中から出てくる色んな大義をどういうふうにインパクトをもって伝えられるかが大事だと感じた。メディアに取り上げてもらう内容は美しくなくても良いが、真実をどう訴えていくか。またその中にどれだけパッションを詰め込めるかが重要になってくる」と総括いただき、今回の研究会は終了いたしました。



コロナが流行し始めて以降、月に2回オンライン研究会を行ってきましたが、当機構の2022年の活動方針として来年はオンラインとオフラインを融合したハイブリッド開催も検討しております。
同時に「オンライン会員の募集」「連携機関との共同研究の実施」「アーカイブの運用」も行っていきますので、当機構に入会をご希望の方はぜひお申し込みください。

次回は1月11日(火)に、1923年創業の有限会社川崎商店の代表取締役である川崎絋嗣氏にご登壇いただきます。