【第41回100年経営研究会】代々続く地域への貢献が大和川酒造をさらなる長寿企業へと導く(登壇者:1790年創業/合資会社大和川酒造)
2022年4月12日
2021年3月22日(火)、第41回100年経営研究会を開催いたしました。
今回の研究会では、1790年に創業された合資会社大和川酒造店の会長である佐藤彌右衛門氏をお迎えし、大和川酒造の「これまでの歩み」や「長寿の要因」などについてお話しいただきました。
また、100年経営研究機構からは当機構顧問で静岡県立大学教授の落合康裕先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。
登壇者の紹介
今回の登壇者である佐藤会長の経歴からご紹介いたします。
<登壇者プロフィール>
合資会社大和川酒造店
会長
佐藤 彌右衛門(さとう やうえもん)
1951年生まれ。
1973年3月東京農業大学短期醸造科卒業。
現在は、大和川酒造店の会長の他、
ブロジェクト会津株式会 代表社取締役社長
ジザケジャパン株式会社 取締役会長
会津電力株式会社 取締役会長
川内電力株式会社 代表取締役社長
飯舘電力株式会社 代表取締役副社長
ふくしま自然エネルギー基金 代表理事
全国ご当地エネルギー協会 代表理事
などの要職を務める。
第1部:トークセッション(合資会社大和川線 会長 佐藤 彌右衛門 氏 × 落合康裕 顧問)
今回のトークセッションでは、「大和川酒造の「これまでの歩み」や「長寿の要因」などについて佐藤会長よりお話しいただき、対談を通じて学びました。
ポイント
1.奈良から福島へ。230年以上続く大和川酒造店の沿革
2.230年以上続く長寿の要因と襲名の意義
3.東日本大震災を経て、会津電力株式会社を設立
1.【奈良から福島へ】大和川酒造店のこれまでについて
1790年(寛政2年)に創業され、今年で232年目となる大和川酒造ですが、社名にもあるように佐藤会長の先祖はもともと奈良県の大和川付近の出身とされています。
当寺の大和川はよく氾濫することが多かったため、1600年代に治山治水が行われ、土手や堤防を作って川の流れを変え、その後、空いた土地に地域の人たちが綿花を植えたところ、紡績業の発展へと繋がりました。
そしてこの時、初代・彌右衛門氏は綿花の技術を持って会津を訪れ、1700年代中頃に綿屋を創業したとされています。
その後、米の価格の安定を図るために免許制度が設けられ、酒箒(お酒を販売するための免許)をもらったころから、大和川酒造として1790年より232年もの間、酒造業を営まれてきました。
2.230年以上続く大和川酒造の長寿の要因と襲名の意義
彌右衛門会長は大和川酒造が232年も続いている長寿の理由として下記の2つを挙げられました。
- 時代に合わせて商品・サービスを変えてきたこと
- 地域に貢献すること
1つ目の「時代に合わせて商品・サービスを変えてきたこと」に関しては、時代・環境・マーケットが変化し、価値観・ライフスタイルが変化したこと、そして消費行動が変化してきたことに伴って、大和川酒造もその時代の変化に遅れることなく商品・サービスを変えてきたことが長寿の要因といいます。
2つ目の「地域に貢献すること」に関しては、大和川酒造では代々、喜多方との繋がりを大事にされており、彌右衛門会長は「お前のじい様はな、〜」「お前の父様はな、〜」と言われたらおしまいだと話されていました。
地域で自社だけが儲けるのではなく、7代目は地域酒造組合長、8代目は町並保存活動、そして彌右衛門会長は会津電力設立といったように、これまで地域の恵みを受けつつも世代を超えて地域に貢献してきたからこそ、230年以上続く長寿企業になることができたと考えられます。
同様に襲名することの意義についても、「佐藤彌右衛門」という名前を襲名することによって、良いお酒を作るために必要な質の良いお米やお水などといった地域の恩恵を受けることができ、地域からの信頼も受けることができますが、一方でその場その場で先代世代が地域に貢献してきたからこそ、自身も恩恵を受けるだけでなく地域に貢献していく必要があるとお話しいただきました。
3.東日本大震災を経て、会津電力株式会社を設立
代々続く地域への貢献活動の一つとして、彌右衛門会長は東日本大震災が起きた後、「会津電力株式会社」を設立されました。
もともとは震災で困っている人たちをハード面だけでなく精神的な面でも助けるために、会津が今後どうしていくべきかを議論するべく福島会議が立ち上げられ、そこからシンポジウムや勉強会を経て、「地域の中でエネルギーを自ら作り地産地消していくことで、地域の困っている人たちを助けよう」という思いで会津電力株式会社を立ち上げられました。
昔から会津は水も食料もエネルギーも豊かな地域であることから、会津電力を設立してからは太陽光パネルの設置や会津の豊かな水力を活かすなど、再生可能エネルギーを使った発電を拡げ、地域に貢献されています。
そして現在では、会津電力株式会社に喜多方市・磐梯町・猪苗代町といった周辺の自治体や、東邦銀行・福島銀行・会津信用金庫といった地域の有力金融機関など、計80団体・個人(2018年末時点)が出資するほど、大きな期待と信頼が寄せられています。
これだけ多くの出資者を集めることができたのは、大和川酒造が9代に渡って喜多方との繋がりを大事にして地域に貢献し続け、地域や事業者の方々との信頼関係を築き上げてきたからであり、会津電力としての地域への貢献が家業の次の100年へと繋がっているといえます。
第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)
質疑応答では、「全国の蔵元の人たちが集まると、福島の蔵元の人たちは仲が良くて結束力が強い。あれだけ仲が良いのは福島の特性なのか、他に理由があるのか」について質問があり、「平成2年頃、福島の蔵元は大量生産・大量販売で安売りする蔵元もあれば、大吟醸しか作らない蔵元もあり、方向性がバラバラだった。こうした状況を受けて、平成4年に新潟県の清酒学校に倣って福島県で『清酒アカデミー』が立ち上げられ、酒造会社が20社ほどが集まって、高品質な清酒を作るために研究し合いかつ競い合った。その結果、清酒の品質も上がり、結束力も高まった。」と佐藤会長よりご回答いただき、今回の研究会は終了いたしました。
次回は4月5日(火)に、1916年創業の有限会社船宿あみ達の4代目女将である高橋並子氏にご登壇いただきます。