活動報告

【第44回100年経営研究会】ちょうちんを中心として地域が繋がる。変革に挑戦しさらなる長寿企業へ(登壇者:1921年創業/有限会社秋村泰平堂)

2022年5月23日

2022年5月17日(火)、第44回100年経営研究会を開催いたしました。

 

今回の研究会では、1921年に創業された有限会社秋村泰平堂の代表取締役である秋村敬三氏をお迎えし、「事業承継をした際の秋村氏の苦悩と決断」「生活に寄り添うちょうちんの新しい活用方法」などについてお話しいただきました。

また、100年経営研究機構からは当機構代表理事で日本経済大学大学院特任教授の後藤俊夫先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。

 

登壇者の紹介

今回の登壇者である後藤先生の経歴からご紹介いたします。

 

<登壇者プロフィール>

【第44回100年経営研究会 登壇者】
有限会社秋村泰平堂  
代表取締役
秋村 敬三(あきむら・けいぞう)氏

 

1978年4月23日大阪生まれ大阪育ち。 摂南大学経営工学科卒業後、外資系大手印刷機械メーカーにて就職。東京にて勤務。
順風満帆の中2年後、家業のちょうちん屋を継ぐことを決める。 パソコンなどのITで時代が大きく変化している中、すべてが手作業の職人の業界に入り悪戦苦闘する。
変革に挑戦していくが、変化を嫌う従業員や職人と衝突しながらよりよい会社を目指し日々奮闘している。 父親の“動くな。じっとしとけ最後に残ったものが勝ちや!!”という言葉に疑問を持ちながら、異業種の会などに参加し新たな顧客開拓につなげている。
家業から企業へ、ちょうちんと言えば秋村村泰平堂と言ってもらえる会社を目指している。現在4代目。

 

第1部:トークセッション(有限会社 秋村泰平堂 代表取締役 秋村 敬三 氏× 後藤 俊夫 代表理事)

今回のトークセッションでは、「事業承継をした際の秋村氏の苦悩と決断」「生活に寄り添うちょうちんの新しい活用方法」などについてよりお話しいただき、対談を通じて学びました。

 

ポイント

  1. 秋村敬三氏による事業承継
  2. こどもたちが入りたいと思う会社作りを目指して
  3. 固定概念に捕らわれないちょうちんの新しい活用方法

 

1. 秋村敬三氏による事業承継

有限会社秋村泰平堂は、大阪市中央区に本社を構え、様々なちょうちんの製作・販売を手掛ける長寿企業です。

同社の歴史は、1921年に、初代である秋村泰三郎(のち留太郎)が秋村商店を創業したことから始まります。
当時は、現在の本社所在地・中央区ではなく、生国魂神社の参道(天王寺区)に本社を構えていました。
設立は1954年であり、1968年より中央区で事業を展開しておられます。
秋村敬三氏は、2008年に有限会社秋村泰平堂の4代目代表取締役として就任されました。

 

秋村氏は、大学卒業後は東京の印刷メーカーに勤務されていたそうです。
東京での社会人生活を謳歌していた社会人2年目の正月、突如、母親から地元に帰って家業を継ぐように呼び出されことをきっかけに、実家へ帰ることを決意されました。

東京での社会人生活を継続したいと思われていたようですが、いつかは事業承継をしたいと考えていたこと、両親に対する感謝の気持ち、そして、「将来、会社が残っているか分からない」と言う母親からの言葉が決め手となり、実家に戻ることを決意されたようです。

 

入社した当初、秋村氏は、秋村泰平堂の人や情報に対する閉鎖的な経営状況に対して違和感を感じたと言います。
「動かずにじっとしておくこと。最後の1社になれば勝ちである」と言い続けていた父親の保守的な態度と、事業状態に対して不安を抱かれたのです。

そのような状況を打破すべく、秋村氏は外部との交流を求めて異業種交流会に参加するようになりました。
交流会を通じて、「経営」を学ぶうちに秋村泰平堂に対する漠然とした不安感が、危機感に変わります。

 

この不安感・危機感を打破するために、秋村氏は30歳で事業を承継。
しかし、秋村氏の経営方針に同意できない方が退社をしたり、顧客から怒られることが増えたりと、承継直後は思い通りの経営ができなかったようです。
数多くの苦い経験から、「経営者として責任を背負う覚悟」が必要だと痛感した秋村氏は、今後、より良い会社像を実現するために、経営指針書の作成や会社の課題点・今後の動きの設計などの土台作りに励まれています。

 

2. こどもたちが入りたいと思う会社作りを目指して

秋村泰平堂が抱える課題を踏まえて、将来の未来予想図について話していただきました。

秋村泰平堂の抱える課題として下記の3つが挙げられるとのことです。

 

  • 市場の縮小
  • 人材不足
  • 材料不足

 

ちょうちん市場の縮小・同業他社の廃業が同時進行し、需要と供給のバランスに大きな変化は無いため、現状の経営は危機的状況ではありませんが、将来的に厳しい状況に陥ることが想定できます。

また、職人の高齢化に伴う人材不足、ちょうちんの骨組みである竹ひご職人の減少による材料不足という課題も抱えています。

これら課題だけではなく、日本全体が抱える「少子化問題」も今後に関わる課題の1つです。
なぜなら、日本の少子化問題が加速し、祭りや地域文化の継承が薄れることは、ちょうちんを使う場所が無くなっていくことに繋がり、ひいては地域の人間関係希薄化にも影響していくためです。

 

そこで、秋村氏が理想として掲げている、ちょうちんを中心として地域が繋がる未来予想図を、披露してくださいました。
その未来予想図には、ちょうちん文化に触れ、笑顔な子どもたちの様子が描かれていました。

 

秋村氏にとっては、ちょうちん文化には祭り文化が必要不可欠であり、日本の祭り文化の、日本人が工夫をするという大切さを守っていきながらも、新たなものを取り入れる柔軟さを自分のミッションとして掲げています。

ちょうちんと祭りは深い関係にあるからこそ、地域を強く結ぶ祭りを未来に継承する働きかけをしていくべきだと、秋村氏は考えておられます。

 

固定概念に捕らわれないちょうちんの新しい活用方法

最後に、過去の固定概念に捕らわれない、秋村泰平堂の新しい取り組みについてお話ししていただきました。

 

新しく始めた取り組みとして、アートアクアリウムとちょうちんのコラボレーション。子どもたちにちょうちん作りの楽しさを伝えるワークショップ。デザイナーさんと共同して作った、ツリーちょうちんの展示。インバウンド客を狙った、目印としてのちょうちん。など様々なことに挑戦しています。

また、家紋提灯として結婚式や子どもの誕生など、ハレの日にちょうちんを飾る風習を広げる活動を推し進めています。
家紋提灯を通し子どもが家紋を身近に感じることで、家族の繋がりが強まるといった、ちょうちんを中心とした絆の構築を理想として掲げています。

今後も、柔軟な発想で、生活に寄り添うちょうちんの新しい活用方法について、考えていくとのことでした。

 

第2部:総括(総括・学びのポイントを整理)

最後に後藤先生より、「ちょうちんは、海外ニーズの可能性は大いにあるのではないかと考えられます。秋村代表取締役のお話より、私たちが過去のことを話すのは、未来の理想の姿を描くためであります。」と総括をいただき、今回の研究会は終了いたしました。

 

次回は5月24日(火)に、銀座いせよしの社長 である千谷美恵 氏にご登壇を頂きます。