活動報告

【第52回100年経営研究会】海外展開を軌道に乗せ、日本の伝統産業が成長できるプラットフォームの実現へ(登壇者:1872年創業/株式会社門間箪笥店)

2023年3月24日

2022年9月15日(木)、第52回100年経営研究会を開催いたしました。

 

今回の研究会では、1872年に創業された株式会社門間箪笥店の代表取締役である門間一泰(もんま かずひろ)氏をお迎えし、「海外進出のきっかけ」「海外展開を成功させる秘訣」「今後の展望」などについてお話しいただきました。

 

また、100年経営研究機構からは当機構代表理事で日本経済大学大学院特任教授の後藤俊夫先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。

 

登壇者の紹介

今回の登壇者である門間氏の経歴からご紹介いたします。

 

<登壇者プロフィール>
株式会社門間箪笥店 代表取締役
門間 一泰(もんま かずひろ)氏

 

仙台市生まれ。2001年早稲田大学商学部卒後、株式会社リクルート入社。人材領域の営業部門に配属。新規開拓の日々を送る。新規事業開発室に異動後、名古屋、大阪の営業所の立ち上げ及び運営に従事。運営においては、人材採用、育成、マネジメント、他部署との折衝まで全てを担当。その後、自らの希望でブライダル領域の営業部門に異動し、販売促進のコンサルティングを担当。営業成績優秀者等表彰多数。
2011年株式会社門間箪笥店入社。入社後は、自社のブランディング、技能継承、海外展開に力を入れる。2018年 代表取締役に就任。現在は、自らの経験を活かし、他社の事業承継や海外展開のコンサルティングも行う。

 

 

第1部:トークセッション(株式会社門間箪笥店 7代目 門間 一泰(もんま かずひろ)氏 × 後藤俊夫 代表理事)

今回のトークセッションでは、「海外進出のきっかけ」「海外展開を成功させる秘訣」「今後の展望」などについて門間社長よりお話しいただき、対談を通じて学びました。

 

ポイント
 1.創業150年の老舗「門間屋」が挑戦する海外マーケットへの進出
 2.老舗企業が海外展開を成功させるための秘訣とは
 3.作り手が海外に挑戦できるプラットフォームの実現に向けて

 

 

1.創業150年の老舗「門間屋」が挑戦する海外マーケットへの進出

株式会社門間屋は宮城県仙台市にて1872年に創業し、2022年で150周年を迎えました。

「日本の職人仕事を通して世界中に豊かさと感動を創出すること」を理念に掲げ、仙台以外に香港や上海にも展開しながら、計5店舗運営されています。

 

歴史のある小さな企業が海外展開しようとすると周りから批判を受けることもありますが、その中でも門間屋が海外進出を決断したのには理由があります。

それは、日本の伝統工芸品は昭和49年に伝産法ができてから指定品目が徐々に増えているものの、生産額・企業数・従業員数は軒並み下がっていること。

なかには職人が居なくなってしまった産地もあり、もはや絶滅危惧種と言っても過言ではありません。

いくつか要因は考えられますが、その一つとして時代の変化に対して伝統工芸品の職人が対応できなかったことが挙げられます。

 

こうした伝統工芸品の現状から、門間社長は周りから批判されたとしても、今後150年続けていくためには海外展開にも取り組んでいかなければいけないと考え、中国をはじめとした海外進出に挑戦されました。



2.老舗企業が海外展開を成功させるための秘訣とは

門間社長は、海外進出にあたり展示会やポップアップストアなどを香港や台湾、シンガポール、ロサンゼルスなどで展開し、テストマーケティングも実施しました。

最終的には、時差や物流コストなども考慮してアジアを進出先とし、2017年には香港にて常設店をオープン

そして、翌年には現地法人を立て、自社の製品だけでなく、福島の漆塗りなど、他の作り手の商品もともに販売されています。

 

伝統工芸品の職人は高齢な方が多いため、自分で新たに販路を開拓するのが難しく、なかには自分の代で廃業してしまい、そこで伝統が途絶えてしまうことも。

こうした問題を解決するべく、門間屋では他の職人たちの製品も一緒に海外で販売することで、日本の素晴らしい伝統工芸品を海外に発信されています

 

また同時に、海外展開をする際に下記の3つを大切にされています。

 1.実際に売り場で現地カスタマーの生の声を聴き、次の商品開発や品揃えに活かすこと
 2.日本と同等のジャパンクオリティのサービスを提供すること。
 3.現地の人間とコンタクトを取り、海外のマーケット情報を常にアップデートすること

その他、老舗の商品や職人の技を感じてもらえるような店舗づくりなどにもこだわり、海外進出に成功されています。



3.作り手が海外に挑戦できるプラットフォームの実現に向けて

現在、多くの伝統産業では分業によって「製品に対するフィードバックが返ってこない」という課題があります

そのため、作り手は同じ製品を作り続けるだけにとどまってしまい、製品をマイナーチェンジする機会が損失。

 

そこで、これまで海外展開を進めてきた門間屋が下記の役割を担うことで、製品に対する情報が作り手に返り、作り手が継続的に成長できる仕組みを検討されています。

 ・物販(海外店舗での日本製品の流通拡大)
 ・データ収集(モニタリングやマーケティングリサーチ)
 ・コンサルティング(海外進出や商品開発へのノウハウ提供)

 

そのためには、まず門間屋がしっかりと海外展開における実績を作り、海外マーケットに根を張ることが重要です。

今後は香港以外に、中国のメインランドやシンガポールなど、その他の国での展開も検討されています。

すでに海外進出に成功されている門間屋ですが、さらに海外展開を広げていくことで、日本の伝統工芸品を発信する場を増やし、他の伝統工芸品の作り手が海外に挑戦できるプラットフォームの実現に向けて、日々尽力されています。



第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)

最後に高梨理事より「老舗の匠の技というのが海外に進出するのは珍しいこと。どんどん続けてほしい」と総括をいただき、今回の研究会は終了いたしました。

 

次回は11月22日(火)に、株式会社松栄堂の専務取締役である畑 元章(はた もとあき)氏にご登壇いただきます。