活動報告

【第57回100年経営研究会】次世代の経営者を育てながら運送業界に革新を起こし、創業200年へ(登壇者:1913創業/マルソー株式会社)

2023年6月1日

2023年1月10日(火)第57回100年経営研究会を開催いたしました。

 

今回の研究会では、1913年に創業されたマルソー株式会社の代表取締役社長である渡邉雅之(わたなべ まさゆき)氏をお迎えし、「マルソーの創業」「現在の取り組み」「今後の展望」などについてお話しいただきました。

 

また、100年経営研究機構からは当機構代表理事で日本経済大学大学院特任教授の後藤俊夫先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。

 

 

登壇者の紹介

今回の登壇者である渡邉氏の経歴からご紹介いたします。

 

<登壇者プロフィール>
マルソー株式会社 代表取締役社長
渡邉 雅之(わたなべ まさゆき)氏

 

1968年生まれ。大阪経済法科大学経済学部 卒業。
大学時代に起業し、21歳で結婚、大学卒業後は東京の物流会社にて三年間修行し基礎を学ぶ。その後家業に戻り引越し部門を設立。3年で売上1億円まで成長させる。
34歳で青年会議所の理事長、社長にも就任。
2008年には第1号のM&Aを実施し、その後は独自の経営スタイルに転換。
ここ数年でも10社のM&Aを行い、事業を拡大し地域社会に貢献する会社を目指している。

 

 

第1部:トークセッション(マルソー株式会社 代表取締役社長 渡邉 雅之(わたなべ まさゆき)氏 × 後藤俊夫 代表理事)

今回のトークセッションでは、「マルソーの創業」「現在の取り組み」「今後の展望」などについて渡邉氏よりお話しいただき、対談を通じて学びました。

 

ポイント
1.馬車運送から始まったマルソー株式会社
2.運送業が抱える課題を解決し、業界全体の発展を図る
3.マルソーグループが描く将来ビジョン

 

 

1.馬車運送から始まったマルソー株式会社

1913年創業のマルソー株式会社は、新潟県三条市を拠点に物流業を中心に事業展開しており、4代続く長寿企業です。

 

創業者である寅治氏が新潟県加茂市で「渡邉運送部」を立ち上げたのが始まりで、馬喰(牛馬商)であったことから、売り物にならない馬を使って、大正2年に馬車による運送事業を開始しました。

2代目・喜一郎氏は、渡邉氏の曽祖母・デン氏の連れ子で、社交的で明るく、寅治氏が博打で失った土地を取り返すために夜間学校に通うほど、とても勤勉な性格でした。

大東亜戦争が始まり通信兵として出兵した喜一郎氏は、戦争から戻ってくると寅治氏とは血縁関係がないことを理由に邪魔者扱いされたため、三条市にある馬小屋として所有していた場所を譲り受け、奥様とご子息(のちの3代目・喜彦氏)と共に親子3人で移り住みます。

そして借金をして馬車運送を開始し、その5年後、昭和29年に「丸惣運送株式会社」を設立

そこからオート三輪車にて運送事業を本格的に開始し、ごみ収集や遺体搬送などあらゆる運送業務を行い、事業を拡大していきました。

 

しかし、3代目・喜彦氏が高校生の頃に、喜一郎氏が失踪。

その後、寅治氏側の加茂の家が丸惣運送会社を吸収しようとしましたが、喜彦氏はそれを断り、当時お世話になっていた日本通運の元幹部に社長をお願いして、自身は高校に通いながら死に物狂いで働いていました。

喜彦氏は丸惣運送会社を引き継ぐために、高校卒業後は夜間の大学に通って経済を学ぶと共に、自動車整備士の資格を取得。

日産プリンスにて整備の仕事の基礎を身につけた後、家業に戻り、58歳まで社長を務められました。

 

4代目として家業を継承している渡邉社長は、大学時代に通販事業の企業を設立しています。

大学卒業後は東京の物流会社で3年間修行し、そのあと丸惣に戻り、引っ越し部門を立ち上げて、3年間で売上1億円の部門へと成長させました。

その後、マルソーは運送業から物流業に転換し、渡邉社長は34歳で社長に就任します。

事業の失敗や産業廃棄物の不法投棄事件などにより一時は倒産の危機を迎えたこともありましたが、3代目・喜彦氏と2人代表で再建取り掛かり、2018年には大型M&Aを成功

M&Aの成功により自信を持ち、そこから渡邉社長独自の経営スタイルを確立したことで会社も急成長を遂げ、現在に至っています。

 

 

2.運送業が抱える課題を解決し、業界全体の発展を図る

マルソー株式会社はここ数年で10社のM&Aを実施しており、多岐にわたる分野で事業を展開されています。

同時に、渡邉社長は主軸である運送業でも、業界全体の発展を目指して改革を進めています。

 

その一つが「ジャパン・トランスポート・パートナーズシステム(JTP)」です。

JTPは渡邉社長が理事長を務める日本最大級の物流ネットワークで、全国各地の事業者が参加しています。

運送業の課題として、荷物を持って目的地に行き、そこで帰り荷をしなければ片道運航となってしまい、収益が悪くなることが挙げられます。

渡邉社長はこうした運送業界の課題に目をつけて、運送先で荷物をつけてくれる同業社がいれば、収益性の向上が見込めると考え、JTPを立ち上げました。

 

JTPのネットワークシステムの最大の特徴は、事業者同士の顔が見えるようにして、荷物や情報のやり取り、車の貸し借りなどを円滑に行えることです。

実際、JTP内では同業者同士が協力しあうことでお互いが成長できており、運送業全体の発展に繋がっています。

また、30年間かけて地道に同業者のネットワークを構築してきたことが、マルソーの長寿経営にも繋がっていると考えられます。

 

 

3.マルソーグループが描く将来ビジョン

渡邉社長は「次世代の経営者を育てていくこと」と、「日本のコールドチェーンに新たな革命を起こすこと」の2つを、将来ビジョンとして掲げています。

家業については、5代目を渡邉社長のご子息である惣太氏が継承予定ですが、グループ会社であるマルソーグループは経営者が一人だけでは足りないため、未来の経営者を複数人育てながら次世代に繋げていく必要があります

そして同時に、従来の運送業の役割だけでなく、特殊な冷蔵物流技法を確立している会社と組みながら、新たな分野への挑戦も考えています。

こうした将来に向けた人材育成・挑戦によって、マルソーグループをさらに成長させていきたい、とお話しいただきました。

 

また、5代目を継承予定の惣太氏からは、「事業拡大よりも今ある事業を強化していく経営ビジョンを掲げ、マルソーグループから上場する企業を出すこと」を目指しています。

さらに、自身が目指す経営スタイルとして「スタッフに成長や挑戦できる機会を提供しながら、スタッフ第一を念頭に置いた経営を行い、マルソーグループに勤めていることに誇りを持てるような企業を目指していきたい」ともお話しいただきました。

 

 

第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)

質疑応答では「M&Aの案件を進める上で一番大切にしているポイントと、どういったところを見て最終的に意思決定をしているのか」について質問があり、「自分がワクワクするかで最終決定をしている。また、相手社長の空気感、相乗効果があるか、などの数字の部分を見る」と渡邉社長よりご回答いただきました。

 

最後に後藤先生より「マルソーグループはそれぞれの分野で強いものを持っている。また、JTPではどこまでをネットワークでやるかが勝負の重要なポイントだと思う。渡邉社長は人間的な魅力が満ち溢れている。ぜひ一度お会いしたい」と総括をいただき、今回の研究会は終了いたしました。

 

次回は1月24日(火)に、山崎織物株式会社の4代目である山崎 博之(やまざき ひろゆき)氏にご登壇いただきます。