活動報告

【第59回100年経営研究会】酒づくりはサービス業。ファンづくりを行う酒蔵(登壇者:1864年創業/関谷醸造株式会社)

2023年6月23日

2023年2月14日(火)、第59回100年経営研究会を開催いたしました。

 

今回の研究会では、1864年に創業された関谷醸造株式会社の代表取締役である関谷 健(せきや たけし)氏をお迎えし、「関谷醸造株式会社の歴史」「現在の取り組み」「ファンづくり」などについてお話しいただきました。

 

また、100年経営研究機構からは当機構代表理事で日本経済大学大学院特任教授の後藤俊夫先生がトークセッションの相手として登壇し、長寿企業の秘訣について学びました。

 

 

登壇者の紹介

今回の登壇者である関谷氏の経歴からご紹介いたします。

 


<登壇者プロフィール>
関谷醸造株式会社 代表取締役
関谷 健(せきや たけし)氏

 


1994年、東京農業大学 農学部醸造学科卒業。
1998年、現・関谷醸造株式会社への入社を機に地元である愛知県設楽町に戻る。
2010年、7代目として代表取締役に就任。代表銘柄である「蓬莱泉(ほうらいせん)」は、愛知県内への出荷が約8割を占める。伝統的な酒造りを継承しつつ、アグリ事業部の設置やレストランバー「SAKE BAR 圓谷」を名古屋市内にて開業。
日本酒文化を紡ぎ、広く発信していくために海外事業にも積極的に取り組んでいる。

 

 

第1部:トークセッション(関谷醸造株式会社 代表取締役 関谷 健(せきや たけし)氏 × 後藤俊夫 代表理事)

今回のトークセッションでは、「関谷醸造株式会社の歴史」「現在の取り組み」「ファンづくり」などについて関谷氏よりお話しいただき、対談を通じて学びました。

 

ポイント
1.関谷醸造の歴史
2.酒米栽培からレストランまで、酒造りと6次産業化
3.テーマは「ファンづくり」。今後はBtoBでも販路を開拓

 

1.関谷醸造の歴史

関谷醸造が立ち上げられたのは、1864年に初代・武左衛門氏が設楽町の前身である田口村で、庄屋をしていた本家から独立し、酒造業を始めたのがきっかけです。

2代目・佐助氏、3代目・秦氏の代に関しては文献が無いものの、4代目・守男氏は路線やトンネルの建設、銀行の経営を行い田口町長も務めています

そして、関谷社長の祖父でもある5代目・晃氏は新蔵の建設を行い、さらには1985年に現在の主力商品である「蓬莱泉 空」の販売開始、それまで出稼ぎの形態で雇われていた蔵人を社員雇用へ変更されました。

 

6代目・徹氏は、2つ目の蔵「稲武工場(吟醸工房)」を造り、2006年には農業にも参入。

晃氏が設楽町長を務めていた関係から、徹氏は5代目の時から実質的に会社を主導されていました。

7代目関谷社長は新たに外食事業の開始や、消費者自身でお酒造りを体験できる「ほうらいせん酒らぼ」も開始し、日本酒・焼酎・リキュールの製造から、農業(酒米の栽培)、外食事業など、創業200年に向けて幅広く事業を展開されています。

 

 

2.酒米栽培からレストランまで。酒造りと6次産業化

関谷醸造では現在「酒類製造部門」「農業部門」「サービス部門」の3つの事業を行っています。

 

これまで酒造りをしてきた関谷醸造ですが、新たに農業に参入したのには下記の5つの理由があります。

・地元農家の高齢化
・遊休農地の増大
・原料米確保への不安
・地域活性化
・ワイン的テロワール(※)

(※)ブドウ畑を取り巻く自然環境要因(気象条件、土壌、地形、標高など)のこと

 

関谷醸造がある設楽町では、町民の半数が65歳以上で、年々人口が減っており、それに伴い遊休農地の増大や原料米の減少が懸念されています。

また農業に参入することで、自分たちで作ったお米を使って、自分たちで酒造りができ、地域活性化や海外へのPRという点で有利に働きます。

こういった理由から農業参入した関谷醸造ですが、当初はリタイアした農家の方から農地を借りている影響で、栽培面積の増加とともに圃場が11kmに渡り分布しており、非効率な点が課題となっていました。

そこで、農地が点在していても生産性の高い農業を実現するために、情報端末による圃場管理・作業記録などを行う「スマート農業」に着手。

数位センサーによる水管理の自動化や、ドローンを使った肥料や農薬の撒布など、先進的な取り組みを行っています。

米づくりによって出た飼料を近くの酪農家へ提供し、酪農によって排出された牛糞堆肥を米づくりに使用するなど、循環型農業も進めています。

 

関谷醸造は5代目の代に酒造りでも機械化を進めており、働きやすい職場環境を実現しています。

一方で、それぞれの製造工程における本来の意味を理解していないスタッフが増え、機械化による新たな課題も出てきました。

そこで関谷社長は手作りへの原点回帰が必要であると考え、祖父の代に建設した蔵で手作りによる酒造りも行っています。

これにより発酵技術の継承や蔵人の育成を行うと同時に、手作りと仕込みの小ささを活かして、以下の3つにも新たに取り組み始めました。

 

・少量多品種の対応
・酒造りの体験(作業そのものを商品化)
・酒のオーダーメイド(日本唯一のフルオーダーサービス)

 

さらに、蔵元での直売やECサイト、外食事業などのサービス部門もあり、6次産業化にも取り組まれています。

このように関谷醸造では酒米栽培から販売まで一貫して自社で行い、また酒造りを客様に体験してもらうことでエンターテインメントのようにお酒を楽しんでもらうことを意識しながら、酒造りに取り組まれています。

 

 

3.テーマは「ファンづくり」。今後はBtoBでも販路を開拓

近年は、若者のお酒離れも注目されていますが、かつては酒類消費量の1/3を占めていた日本酒も現在は7%程度となっており、日本酒業界も苦境に立たされています。

 

そんななか、関谷社長は時代に合わせたファンづくりが重要だと言います。

自社のファンを増やすためには、まず消費者と接点を作るために、積極的に情報発信をしながらより多くの人に知ってもらうことが大切です。

そこから消費者の声を直接聞き、必要な意見を商品や店舗に反映させながら、消費者との距離を縮める。

そして、徐々に自社への愛着を持ってもらうことで、自社のファンへと変化させていくことができます。

 

実際、関谷醸造が運営する飲食店にきたお客様が、田植えのイベントにも参加するケースがあり、有機的な関谷醸造のファンづくりを実現されています。

さらに今後については、100年以上の歴史で培ってきた酒造りの技術を生かして高付加価値のOEMや研修の受託などといったBtoBビジネスを展開していき、販路の拡大を目指しておられます。

 

 

第2部:質疑応答・総括(総括・学びのポイントを整理)

最後に大髙会長より、「今回のポイントとして、1つ目は地元の縁のつながりを大事にしながら、ビジネスを続けていることが素晴らしいということ。2つ目は海外への販路開拓を頑張ってほしい」と総括をいただき、研究会は終了いたしました。

 

次回は2月28日(火)に、株式会社左京の専務取締役である望月琢矢(もちづき  たくや)氏にご登壇いただきます。