活動報告

第24回研究会「中小企業の100年経営戦略」

2020年2月26日

2020年2月7日(金)、第24回研究会『中小企業の100年経営戦略』を開催しました。今回は2部構成で講義を行い、前半を当機構代表理事の後藤俊夫が担当し、後半を今回のゲストである 帝京大学客員教授 黒崎誠先生にお願いしました。新年最初の企画ということもあり、後藤代表理事からは「100年経営」の研究活動の全容と現在更新中のデータベースについてお話しし、黒崎先生からは「日本の中小企業」の強みやこれからの役割について講義していただきました。

多くのリスクを背負いながらビジネスを継続することが、100年経営の肝
後藤代表理事の講義では、冒頭に当機構における重要な出来事として、元日22:00からNHKで放映された「東京ミラクル:老舗ワンダーランド-佐藤健・物々交換の旅」について報告がありました。海外の経営者が日本の老舗企業に関心を寄せていることをお伝えするパートで後藤代表理事が出演しており、中国人経営者へ行った講演会の様子も放映されました。また1月2日には当機構 高梨一郎理事の“高梨家”を含めたキッコーマンファミリーについて番組が組まれ、千葉県野田市にある庭園や江戸時代における地域貢献の功績などが放映されました。


後藤代表理事の講義では冒頭、改めて100年超企業の地域別、業種別、年代別の実数や海外比較、各国の100年企業の特徴などをお伝えし、対象とする団体についても細かく説明しました。
研究を始めた当初の学会では、100年企業にカウントする対象をどこまで広く持つか、という議論があり、株式会社・有限会社・合資会社などの他に、医療法人・学校法人・士業事務所などを対象とすることを決めたそうです。過去にイギリスの植民地であった途上国には、当時設立された弁護士事務所が多く現存し、その国の歴史や文化を象徴しています。
他にも、各学校の同窓会、スポーツクラブなどを対象としており、特にヨーロッパや南米にはサッカーチームを応援する多くのクラブが100年以上続いて現存し、地域にとって欠かせないコミュニティとして運営されています。
対象外としたのは、官立の法人や国立の大学です。民間と官立とでは経済基盤が大きく異なり、継続性のリスクに差異があるためです。100年経営の研究では、多くのリスクを背負いながらも如何にビジネスを継続していくかが重要なポイントとなります。そのため宗教法人も対象外としています。
概要の後は、100年経営を見るための5つ軸を紹介し、時間軸、空間軸、家族軸、事業軸、文化軸、それぞれの考え方を共有しました。

日本は“中小企業先進国”である自覚を持つべし
後藤代表理事の後は、ゲストの黒崎先生へ講義をお願いしました。黒崎先生は冒頭に、中小企業に対する誤った世論がはびこり、「中小企業無用論」や「生産性の低い中小企業を淘汰すべし」という声があることを憂い、日本を強くする原動力となるのは中小企業であることを知っていただきたいと伝えました。
黒崎先生は、長らく時事通信社で第一線の記者を務め、様々な企業を取材したなかで、日本における中小企業の重要性を実感されてきました。特に地方へ行くとその構図は明白であり、地方経済の実態を担っているのは未だに中小企業であること、さらには日本全体における中小企業の割合は何年経っても変わらない、というデータを示しました。


後半は、取材を通して実感した「中小企業の強み・特徴」について、具体的な企業を取り上げながら、6つの項目をご紹介いただきました。
黒崎先生が考える「中小企業の強み・特徴」は下記のとおりです。

①自社技術を再発見できる
②小回りが効く
③お客様との信用を非常に大切にしている
④古い技術に改良を加え、新しい技術を生み出す
⑤一歩先を行くことができる
⑥不屈の精神がある

それぞれについて注釈しながら、世界各国が日本の中小企業に期待をしていること、日本は中小企業先進国である自覚を持ち、良い中小企業創りに励まなければならないことを強調し、講義を締めくくりました。

研究会修了後は懇親会を行い、講師、理事、会員、参加者それぞれが交流を深め意見交換を行いました。

次回の研究会は2020年4月3日(金)の開催を予定しております。概要が決まり次第お知らせいたしますのでお待ちください。