活動報告

100年経営アカデミー後期 2日目 開催報告

2017年11月8日

10月28日(土)六本木のハリウッド大学院大学にて、100年経営アカデミー後期の2日目を行いました。
1限目は、日本経済大学准教授であり、事業承継研究所副所長の落合康裕先生による講義を行いました。
テーマは「ファミリービジネスの事業承継」です。


冒頭、ファミリービジネスの特徴をおさえるべく、ファミリービジネスの強みと弱みについて1日目の講義内容をおさらいしました。
現代社会において、ファミリービジネスはネガティブなイメージが先行しがちですが、実際には様々な強みが存在します。
例えば、ファミリービジネスは所有と経営が分離しているサラリー企業と比べると、経営者の在任期間が長く、長期的な経営戦略を立てることができます。また、意思決定者の存在が明確であるため、経営判断のスピードが早いという強みもあります。

また、具体的な財政状況についてもファミリービジネスの優位性は認められています。実際の統計では、ファミリービジネスの“自己資本比率”と“売上回転率”の数値が高いという結果が出ており、ファミリービジネスは、保守的ではなくチャレンジ精神が旺盛であるということが分かります。長寿要因でもある「伝統と確信」を実行している証しとも言えるでしょう。

ファミリービジネスの強みと弱みについておさえたあとは、ファミリービジネスの事業承継が“難しい”と言われている理由について様々な角度から学びを深めました。
例えば、ファミリービジネスの事業承継には以下のような障害があると考えられます。
・創業者が会社に愛着を持ちすぎて「譲りたくない」と思ってしまう。
・後継者が「継ぎたくない」と思っている。
・後継者と内部役員との関係性が上手くいっていない。
・後継者を育成する仕組みが整っていない。
上記はあくまで表面化している例ですが、実際に先代と後継者の関係性に問題がある場合や、逆に親子関係は上手くいっていても内部役員や外部取引先との関係が上手くいっていない場合など、乗り越えていく壁はいくつもあります。
それらの問題についてどのように対策していけば良いのか、ファミリービジネスとして213年続いている「近江屋ロープ」を例に様々な理論を学びました。


お昼休憩をはさみ、2限目には特別講師として、株式会社山本海苔店の山本貴大さんにご登壇いただきました。


「山本海苔店」は1849年に創業し、代々ファミリービジネスを続けてこられた老舗企業です。
現当主は、貴大さんの父親である山本徳治郎氏。貴大さんは次期後継者です。
まず、海苔の一般的な知識について教わった後、山本海苔店の歴史についてお話を伺いました。
現当主を6代目とする山本海苔店は、初代から4代目までは男の子に恵まれず、代々養子で承継をしています。しかし、6代目ともなれば多くの分家が存在するはずですが、山本海苔店では“長男以外は入社出来ない”という決まりをつくり、本家と二分家で運営するという体制を敷いています。親族内での人事リスクを軽減する目的であろうと、貴大さんは言います。

ただ、貴大さん自身は本家の長男として生まれたにも関わらず、祖父や父親からは一度も「山本海苔店を継ぐように」とは言われていないそうです。
小さい頃は無邪気に「将来はサッカー選手になりたい」と思っていました。
しかし次第に、「自分も将来継ぐのだろうな」という意識が芽生え、いつしか“将来継ぐために必要なことはなんだろう”と人生を選択するようになったと言います。

貴大さんは大学卒業後、大手銀行に3年間務め、山本海苔店へ入社しました。外の世界を経験したからこそ、山本海苔店の不思議なところを見つけては驚く日々を過ごしているそうです。
例えば、「利益を出して儲けよう!」という意識は薄く、それよりも“如何に美味しい海苔を提供できるのか”を重視している点。これは“三方良しの精神”とも言えます。
また、“税金はきちんと払う”という考え方。地域社会へお世話になっているのだから税金は払って然るべきと考え、“節税”という発想は全くないそうです。
しかし貴大さんも次第に、このような不思議こそが“永く続く秘訣”なのだろう、と考えるようになったと言います。


3限目は、「ファミリービジネスの事業承継」についてより学びを深めるためのディスカッションを行いました。


参加者自身が貴大さんになったという仮定のもと、山本海苔店の課題や解決策について挙げていただき、その解決策は“実際の山本海苔店として”実現可能なのかどうかを貴大さんへ伺いながら、山本海苔店の変えてはならない部分(伝統)と、挑戦しても良い部分(革新)について、生の声から学びを深めました。

講義終了後は、講師を交えた懇親会を催し、講義中に聞けなかった質問やこれからの山本海苔店の改善策など、意見交換を行いました。

次回は、11月4日(土)にNPO法人ファミリービジネスネットワークジャパンの高梨一郎理事長を特別講師に迎え、
「ファミリービジネスのガバナンス」をテーマに学んでまいります。