第6回視察ツアー「金沢視察ツアー2018」
2018年11月6日
今回の訪問先は、加賀100万石 前田家のお膝元「金沢」。3年連続の訪問です。全国各地より経営者や研究者の方にお申し込みをいただき、総勢15名での開催となりました。
1300年の歴史を誇る温泉旅館“法師”、明治期より洋食器製造を続ける“ニッコー”、八百屋の老舗“掘他”、地元企業の永続を支える“北國銀行”を視察し、「なぜ、永く続くことができたのか」「永く続けるための秘訣は何か」についてお話を伺いました。
一行は10月31日(水)午後に加賀温泉駅へ集合。宿泊先である創業1300年の法師旅館のスタッフにお迎えいただき、バスで粟津温泉郷を目指しました。
法師旅館へ到着後は、法師旅館の会議室にてオリエンテーションと講義を行いました。まず事務局から本ツアーの目的について説明を行い、次に参加者の皆様から自己紹介をいただきました。
その後の後藤代表理事の講義では、今回の視察先の事前学習として、“法師旅館”、“ニッコー”、“掘他”それぞれの概要を説明し、その内容を受けて「実際、当主にどのような質問をしてみたいか?」参加者一人ひとりに発表していただきました。“ニッコー”のパートでは、元々洋食器事業で創業した企業が現在では電子セラミック事業や住設事業への展開が著しく、どのように他業種へ進出したのかを知りたいとの意見が多数あがりました。また、“掘他”のパートでは、今年7月に八百屋が目利きした野菜とフルーツを味わうカフェをオープンし、最近では1時間待ちの行列が当たり前だという話を聞いて、小売業からサービス業へどのように変革をしたのか?スイーツやカフェ事業への展開には女性の影響があるのではないか?などを質問したいと発表がありました。
後藤代表理事は、質問を持って話を聞くことで新しい発見を得られることがある。質問は視察や取材の際の武器であるとまとめ、一行は本ツアー行程について改めて期待感をふくらませました。
後藤代表理事の講義後は、法師46代目当主 法師善五郎さんのお話を伺いました。今年、ちょうど開湯1300年を迎えた法師旅館では、次期当主となるはずだったご子息が急逝したため後継者問題が台頭していましたが、当主のご息女が今年度より若女将として法師旅館を切り盛りし始め、当主自身も一層気合が入っている様子でした。当主からは、法師旅館開湯時の言い伝えやお湯の効能、さらにこれまで各当主が守ってきた想いについてお話を伺い、1300年という長い歴史があるとしても、謙虚に一日一日を積み重ねていくことが重要であるということを学びました。
46代目当主のお話のあとは、公益財団法人前田育徳会会長 石田寛人さんより加賀100万石前田家の歴史と金沢の特徴についてお話を伺いました。金沢という土地では、今なお“前田家”の影響力が大変強く残っており、金沢を知るためには前田家を知らなくてはならないという事実に、参加者も深い関心を寄せていました。
石田さんのお話のあとはお待ちかねの夕食会。当機構の大高英昭副代表理事より乾杯の挨拶を行い、北陸の旬料理を堪能しつつ、参加者同士懇親を深めました。途中、若女将にもお越しいただき、一人ひとりへのご挨拶・おもてなしをいただきました。夕食会の後半では、後藤代表理事の声掛けにより「法師旅館をもっと多くの人に知ってもらうためにはどうしたらよいか?」というテーマで自由に意見交換を行いました。参加者からは「1300年の歴史をもっと全面に打ち出すべき」「蔵に眠っている古文書を良い意味で表に出すべき」「粟津温泉郷全体を盛り上げていかないといけないのでは」「温泉以外にも“もう一度来たい”と思わせる強いコンテンツが必要では」などの意見が交わされました。
夕食後は、各々二次会を楽しんだり、温泉に入り直したり、庭を散策したりとそれぞれがゆっくりと法師旅館を楽しみました。
2日目早朝6時45分より46代目当主の法話を聞き、朝食後、法師旅館を出発し、一行は視察先である“ニッコー”へと向かいました。
ニッコーは1908年創業。明治期に欧米文化が急速に普及した頃、洋食器作りの気運の高まりを感じた金沢の有力者と旧藩主前田家の共同投資により「日本硬質陶器」としてスタートしました。もともとは陶磁器事業一本の会社でしたが、戦後の経済成長や顧客のニーズ変化に応じて、住設事業、電子セラミック事業へも参入し、1989年に名古屋証券取引所市場第2部へ上場しています。現在ニッコーは三谷家が経営を担っており、代表取締役の三谷明子社長よりニッコーの歴史と現在の事業内容についてお話を伺いました。三谷社長のお話のあとは実際に陶磁器を製造している工場を見学し、ニッコーのものづくり対する姿勢とニッコーブランドの優位性について学びを深めました。
ニッコー視察のあとは、創業156年の料亭「北間楼」にて金沢の郷土料理“治部煮”をいただき、一行は次の視察先である“掘他”が運営するカフェへと向かいました。
カフェ“HORITA205”へ入ると、平日であるにもかかわらず、多くの女性や若者で賑わっていました。贅沢にも今年の7月にオープンした超人気カフェの一室をお借りし、パフェをいただきながら代表取締役の須田武久さんより掘他の歴史についてお話を伺いました。
掘他は創業140年。明治時代に八百屋からスタートした堀他は、現当主のお父様の代で“ヘルシーバー”や“カット野菜工場”、“ケーキ工房”の新設、本社の移転など様々な改革を行っています。ちなみに、現当主の一つ前の代は、当主の奥様が経営を担っておられ、当主自身は婿養子として掘他へ入っているそうです。当主曰く、掘他の強みは野菜の目利き力。全国の農家を周り尽くして得た豊富な情報と旬を見逃さない職人技が継承されていることが八百屋として生き残り、その美味しい野菜やフルーツをスイーツとして活かすことができた要因だと話しました。またシェフが考案した新作の「いしか和」パフェはフルーツやジャム、アイスクリーム一つ一つにこだわりがあり、その美味しさに参加者も大変ご満悦でした。
掘他でそれぞれお土産を購入した後は、最後の視察先である“北國銀行”を訪問しました。北國銀行は地域密着型の金融機関として、石川県を中心に北陸3県の様々な企業の永続をサポートしています。今回は、北國銀行の取り組みと事業承継対策として実際に行っている施策について共有をしていただきました。 そして最後に、参加者から本ツアーの感想を伺った後、後藤代表理事のまとめの講義を行いました。
参加者からは、
「長寿経営には変革の必要性が高いと感じました。一つの事業に固執するのではなく、その事業で培った技術やつながりを活かした変革が企業を支えるのだと学びました。」
「1300年といえどもそれは1日1日の積み重ねであり、次の代へ資産を減らさずに橋渡しをする姿勢の重要性を改めて感じました。」
「老舗企業一社ずつにエピソードがあり、また永く続いたからといって来年も必ず続くわけではないということを痛感しました。その現実を理解して経営を行うことが重要なのだと思います。」
などの感想をいただきました。
次期ツアーは来年の5月頃、近江八幡にて近江商人視察ツアーを予定しております。
訪問先や具体的な視察先が決定しましたら、追ってご連絡をいたしますのでお待ち下さい。