活動報告

2月22日〜25日 台湾老舗視察ツアー 開催報告

2018年3月2日

2018年2月22日から25日の3泊4日にて、台湾視察ツアーを開催いたしました。今回のツアーは、100年経営研究機構と事例研究会の共同企画として実施し、9名が参加いたしました。本ツアーは、台湾(今回は対象を台北市内)の長寿企業を訪問し企業永続の秘訣を探ること、また台湾における100年経営・ファミリービジネス研究チームとの交流を図ることを目的に開催されました。

創業以来100年以上続く長寿企業(NPO含む)は、台湾に合計212社あり、最古は松山媽祖廟(1758) 、企業では施美玉名香有限公司(1774)が続きます。台湾の長寿企業TOP80社の調査では、その約1/3(27社)が台北市に集中しています。業種別には、中国茶(8)・菓子(2)など食品関連(計13)が半数を占め、他に病院(3)、料理店(2)、漢方薬(2)、刃物(1)、お香(1)、寝具(1)、出版(1)に分布しています。なお、台湾政府経済省商業課は「百年一甲子老舗連絡会」を設立し、相互交流を図る他、創業以来100年以上続く企業に「百年老店」という称号を与えています。
 台湾の長寿企業に接する際は、歴史に注目すると良いと言われます。一つは創業家の歴史、もう一つは台湾自身の歴史です。台湾長寿企業の中には日本統治の歴史が強く残されている企業もあり、創業年を日本の年号で“明治〇〇年”と表記している事例もあります。また中国大陸から移住してきた事例も少なくありません。

参加者は各々、上記のような台湾の現状を事前に学んだ上でツアーに参加していたので、本ツアーでは、ただ老舗企業への訪問視察だけでなく、台湾の歴史や文化についても触れ、学びを深められるよう行程を組みました。

台北の長寿企業TOP27
【1日目】
各自が滞在先ホテルであるタンゴホテルにチェックイン後、バスで九份まで移動。あいにくの雨でしたが、千と千尋の神隠しの舞台になったとも噂される九份の趣ある雰囲気と活気ある街並みを堪能しました。その後、本ツアーの企画をしてくださった矢野様のコーディネートにより、知る人ぞ知る本場台湾料理のお店で夕食をとり、台湾料理の素朴でヘルシーな味わいに舌鼓を打ちました。食事会では参加者の自己紹介をそれぞれ行い、どのような経緯で参加をしたのか、そしてどのような目的で参加したのかなど、参加者同士の親睦を深めました。


【2日目】
午前中は、Advantech Co. 研華科技(アドバンテック社)にて、100年経営に関するシンポジウムに参加いたしました。機構からは後藤代表理事が基調講演、並びにパネルディスカッションに登壇いたしました。その後、アドバンテック社の工場見学を経た後、アドバンテック創業者である何春盛(Chaney Ho)氏主催の昼食会に参加いたしました。台湾の実業家や研究者と昼食をともにし、事業承継の知恵や具体的な取り組みについて積極的な意見交換を行いました。


午後は、バスにて台北市内の老舗店舗をめぐるツアーを実施。お茶の老舗である有記銘茶では、5代目当主のお話しをお伺いしました。作業場を案内いただいた後に、実際にお茶を入れていただき本場の発酵茶の味を堪能しました。


その後、迪化街に移動。ここは有名な老舗街で、台湾一の漢方、乾物、布の問屋街であり、旧正月前は歩くのが大変なほど賑わうそうです。日本統治時代(1895-1945)には台湾全土から乾物、漢方薬、お茶、布などを扱う商店が集結し、台湾の主要な商業エリアとなりました。美しいバロック建築の建物が並び、裕福な商人たちがこの街に集結したというこちらの商店街で100年超企業探索のフィールドワークを実施しました。六安堂參藥行有限公司においては、幸運なことに5代目にあたる次期当主に接客いただきお話を聞くことができました。


その後、夜市を体験した後、小籠包レストランにて食事をとり解散となりました。

【3日目】
午前中に故宮博物館を見学した後、少師禅園に移動し昼食をとりました。少師禅園は日本統治時代に「新高旅社」として建設されたのが始まりです。当時はこの界隈でも名高い名旅館として、各界の紳士達が飲食、そして温泉を楽しみに訪れたそうです。その後、第二次世界大戦末期に入ると、神風特攻隊の接待所として使用され、ここで出戦前の最後の夜を過ごしたそうです。そして1960年代に入ると、元帥・張学良とその妻・趙一荻の軟禁場所になりました。 その後、時を越え1980年代はレストランとして一般に開放されるようになりました。こちらで、張学良が100歳まで生きることができた要因とも称される料理を堪能いたしました。


その後、バスで移動し、台湾のディベロッパー「日勝生活科技」との合弁で2010年12月、台北市北投区の北投温泉にオープンした「日勝生加賀屋」を視察いたしました。
加賀屋は、1906年石川県七尾市和倉温泉に創業。1977年(昭和52年)1月より、旅行新聞新社が主催する「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」(全国の旅館業者の中から選定)の総合部門1位として認定・表彰されています。この年以降「36年連続」で加賀屋が総合「1位」を受賞しています。日本を代表するおもてなし旅館である加賀屋が台北に出店して8年。この度は、加賀屋を誘致し、立ち上げをプロデュースした德光重人氏に、立ち上げの経緯や日本文化をいかに現地にカスタマイズしサービスを創り上げていったのかなどを説明していただきました。德光氏は、後藤新平と並んで台湾人に尊敬をされている日本人として著名な八田與一の功績を伝える活動をしておられます。八田與一の出身が金沢であったこと。合わせて、李登輝元総統が尊敬する日本人として常々名前をあげておられる西田幾多郎や鈴木大拙の出身も金沢であったことから、加賀屋に訪問されたことなども重なって、台湾に加賀屋が進出するご縁につながったなど、大変興味深いお話を伺うことができました。


その後、淡水に移動し、淡水紅毛城や前領事館邸を見学。紅毛城は古くはセント・ドミニカ城(聖多明哥城)、アントニー要塞(安東尼堡)と称され、台湾新北市淡水区に残る古跡の一つです。1628年、当時台湾北部を拠点としていたスペイン人により建設され、スペイン勢力撤退後はオランダ人により1644年に再建されました。1867年以降はイギリス政府に租借され、当時のイギリス領事館が業務を開始し、それは1980年に中華民国政府に所有権が移管されるまで続きました。紅毛城は台湾に現存する最古の建築であると同時に、内政部により国家一級古跡に指定されています。台湾が地政学的にも重要な拠点であったことを改めて学び、統治国が変わりながら今まで長く続いていた台湾国内の老舗企業に想いを馳せながら淡水の景色を楽しみました。


視察終了後、台北に戻り、現地日本人経営者との交流食事会を実施しました。台湾で活躍している日本人経営者、台湾人経営者10名の方にお集まりいただき、日台の交流を深め、100年経営に関する考え方についての意見交換など賑やかな時間を過ごしました。

【4日目】
最終日はそれぞれが別行動をし、フライトの時間ギリギリまで思い思いに台湾の見学や交流を深めておりました。

今回は当機構として初めての台湾ツアーとなりましたが、今後はアジア圏のみならず様々な地域の視察ツアーを企画したいと考えております。 次回のツアー予定が確定いたしましたら、改めてお知らせをさせていただきます。