活動報告

【第117回100年経営研究会】開催報告(登壇者:株式会社国宝社 取締役 木村秀継 氏)

2026年9月2日

2026年8月28日、東京・文京区を拠点に書籍やコミックなどの製本を手がける株式会社国宝社 取締役 木村秀継さんを迎え、第117回100年経営研究会を開催しました。

国宝社は、1919年(大正8年)、「本」は先人に学び未来への指針となる文化的財産(=国宝)であるという想いから創業されました。その後、高度経済成長期などに合わせていち早く全自動無線綴機を導入し、印刷物の断裁から梱包までを社内で完結させる一貫作業体制を構築することで、日本の出版文化を背後から支え続けてきた老舗です。

一方で、近年は出版不況やデジタル化による市場縮小の波を受け、25年間にわたり業績が低迷する苦しい時代を経験しました。当時、歴史ある会社を継ぐ重圧を感じていた木村さんですが、自らの「家系図作成とルーツ調査」を通じて歴代経営者の執念や深い愛に触れたことで、「過去の歴史は自分を縛る『重り』ではなく、背中を支えてくれる『お守り』である」と気づきます。この原体験を機に、1,000回を超える社員面談を実施して徹底的な組織変革を行い、会社の業績を奇跡的なV字回復へと導いた歩みが紹介されました。

今回の研究会では、木村秀継さんより、長年培った技術を活かした和綴じ文具のオリジナルブランド「国宝堂」の展開や、和綴じ製本による「社長の自分史」の制作、日本で数社しかできないという専門的な「家系図作成・ルーツ調査」事業など、製本という物理的な加工から、世代を超えた家族の絆を保存する「情緒的・精神的価値」の創造へと、伝統を現代に昇華させる経営についてお話しいただきました。

100年を超える老舗製本会社がいかにして出版不況の逆境を乗り越え、過去の歴史を「お守り」に変えて新たな事業を生み出してきたのか。長寿企業における組織変革、伝統技術の再定義、そして過去と向き合うことで見えてくる事業承継のあり方について考える貴重な機会となりました。