活動報告

【第118回100年経営研究会】開催報告(登壇者:株式会社金井酒造店 代表取締役会長 椎野祐介 氏)

2026年10月20日

2026年9月15日、神奈川県秦野市で唯一の酒蔵・株式会社金井酒造店 代表取締役会長 椎野祐介さんを迎え、第118回100年経営研究会を開催しました。今回は、高梨理事が代表を務める、NPO法人FBNジャパンとの共催で開催しました。

金井酒造店の創業は、明治元年(1868年)にさかのぼります。市内100か所以上で水が湧く秦野の地で、丹沢山系の伏流水を仕込み水に、代表銘柄「白笹鼓」を中心とした酒造りを続けてきました。かつて複数あった市内の酒蔵が姿を消すなか、地域とともに歩んできた唯一の酒蔵です。企業誘致に伴う水脈への影響から、駅近くの旧地を離れて山に近い現在地へ蔵を移すなど、町との共存を重ねてきました。

一方で、日本酒需要の低下やコロナ禍で業績が悪化し、2021年に酒造事業は東京の投資ファンドへ譲渡されます。しかし2022年末、ファンドは撤退を決定。地域創生の立場で蔵に関わっていた椎野さんに声がかかり、わずか2週間で第三者としての承継を決断しました。継いだのは酒蔵だけでなく「地域における酒蔵の役割」だと語る、七代目蔵元としての歩みが紹介されました。

今回の研究会では、椎野祐介さんより、個別面談と毎週の部長会議による経営数字の共有、田植えや地域イベントへの社員全員参加、量販向け商品の見直しと新銘柄の展開など、3年で商品・組織・販路をほぼ再設計した再建の過程についてお話しいただきました。さらに「酒を造る会社から価値を醸す会社へ」というリブランディングのもと、箱根・湯河原の旅館とのペアリングやオリジナル商品の共同開発にも取り組んでいます。あわせて、地域企業とともに蔵を支える「共醸パートナー制度」を、神社やお祭りを地域で支えてきた「リアルファンディング」の仕組みになぞらえて紹介いただきました。

質疑では、顧問として残る創業家6代目の佐野博之さんとの関係や社員との関係づくりについて議論が深まり、椎野さんは「役割も負債も不安も背負った」と振り返りました。そして「8代目は、地域を想う次の世代の起業家に渡したい」と語りました。創業家でも同業の事業会社でもない第三者が、地域から見た価値を手がかりに老舗をつないでいく。承継のかたちそのものを問い直す、当研究会として新しい切り口の回となりました。