【第119回100年経営研究会】開催報告(登壇者:株式会社若林洋食器店 代表取締役 若林嘉一郎 氏)
2026年10月29日
若林洋食器店は、初代・若林国蔵が横浜・山下町で始めた商いにさかのぼります。帰国する外国人が手放す家財道具を引き取り、修理して販売するところから出発し、ホテルなどの依頼に応えて洋食器を扱うようになりました。帝国ホテルやホテルニューグランドにも納品しています。関東大震災で伊勢佐木町へ移り、戦前は国内外へ販路を広げましたが、横浜大空襲で再び拠点を失います。終戦の翌年、倉庫だった野毛の地で再出発し、1964年の東京オリンピックでは選手村などに納品しました。
4代目の若林嘉一郎さんは、もともと家業を継ぐつもりはなく、高校卒業後に映画の仕事を志してオーストラリアへ留学しました。各国の友人と料理を持ち寄るなかで、食を通じて宗教や文化の違いが自然に伝わり、人と人がつながっていく経験をします。それが家業を継ぐ決意につながりました。2024年11月には創業120周年を機に、「伝統」「融合」「食文化」を三つの柱とするロゴマークへ刷新しています。
今回の研究会では、高単価のレストランを主な顧客とする現在の事業についてお話しいただきました。野毛本社2階のプロ向けショールームには約400種類の器を揃え、照明や盛り付けとの相性を店で確かめてもらうための貸し出しも行っています。あわせて、日本の産地と組んだ特注品の制作や、ドイツの銀器ブランド「Robbe & Berking」の正規販売店としての取り組み、20年ほど取引が続くNOBUへの別注品の納品なども紹介されました。
質疑では、販売拡大の考え方や、耐久性の高い器を扱う商売の価値づけについて議論が深まりました。若林さんは、大量生産で規模を追うのではなく、相談すれば料理に合う答えを一緒に考えてくれる、と頼られる分野に特化した会社を目指したいと語りました。また、薄い器ほど欠けやすいことも必ず顧客に説明しているそうです。大髙会長からは、ロゴの三つの柱に息を吹き込み、企業理念と結びつけてほしいとの言葉が寄せられました。器を売るのではなく、料理人とともに一皿をつくる。その専門性こそが、120年を超えて老舗を支えてきたことが見えてきた回となりました。





